このコラムには一部ネタバレに抵触する表記があります。『天気の子』を未見の方は注意してお読みください。 恐るべき破壊衝動だ。 『君の名は。』の歴史的大ヒットの後に、まさかこれほど純度の高い、むき出しの作家性を突きつけてくるとは思わなかった。気晴らしの中編の企画ではないのだ、映画館が最も賑わう夏休みシーズンに、最大手の映画会社が配給する、今年最も公開規模が大きい作品で、これだけ強い我を通すことができる人間がいるということに驚く。湯浅政明監督が『きみと、波にのれたら』でウェルメイドなドラマを志向したのとは対照的に(売上も対照的な結果になりそうだ)、新海誠監督は自分の作家としての武器を研ぎ澄ます方法に進化した。世界でただ1人、新海誠しか語らないであろう物語を、新海誠にしかできないで映像で紡ぎあげている。 にもかかわらず、独りよがりな作家の内省的な作品に終わらず、現代の空気と強烈に呼応してしまってい