掲載されました。大屋雄裕「変わる時代の、変わらない視野(日本弁護士連合会『デジタル社会のプライバシー:共通番号制・ライフログ・電子マネー』(航思社、2012)書評)」『図書新聞』3069号(2012年7月7日)、図書新聞社、2012、5面。なお最終部において「我ら国民がそう望むなら政権のあり方もそれが実現するものも変化する」と書いた上でどのように変化したかを語っていないあたりに春秋の筆法を読み取っていただきたい。 当然のことではあるものの紙幅には制限があったので、そこで書ききれなかった点について以下で多少補足を。 もちろん弁護士さんたちが書かれたものなので理論的な水準はイマイチだが事実が手広く調べてあって感心というのが相場的な評価であろう(後者の点は書評でも明確に書いた)。 一番よくできているなと(あくまで私の観点からだが)思う部分でも依拠しているのはレッシグの『CODE version
■ 「個人情報」定義の弊害、とうとう地方公共団体にまで 現行個人情報保護法の「個人情報」の定義に不備があることを、これまでずっと書き続けてきた。「どの個人かが(住所氏名等により)特定されてさえいなければ個人情報ではない」(のだから何をやってもよい)とする考え方がまかり通ってしまいかねないという危機についてだ。 2003年からはRFIDタグ、2008年からはケータイIDによる名寄せの問題を中心に訴えてきたが、当時、新聞記者から説明を求められるたび、最後には「被害は出ているのでしょうか」と、問われたものだった。当時は悪用事例(不適切な事例)が見つかっておらず(表沙汰になるものがなく)、これが問題であるという認識は記者の胸中にまでしか届かなかった。 それが、昨年夏から急展開。スマホアプリの端末IDを用いた不適切事案が続々と出現し、それぞれそれがなぜ一線を越えているか説明に追われる日々になった。ス
■ 武雄市長、会見で怒り露に「なんでこれが個人情報なんだ!」と吐き捨て 「日本ツイッター学会(自称)」会長兼「日本フェースブック学会(自称)」会長の、武雄市長(佐賀県武雄市)が、武雄市の市立図書館で、CCC(カルチャー・コンビニエンス・クラブ)と提携して、Tポイントカードを導入するとの構想を発表した。 武雄市とカルチュア・コンビニエンス・クラブ株式会社の武雄市立図書館の企画・運営に関する提携基本合意について, CCC カルチュア・コンビニエンス・クラブ株式会社, 2012年5月4日 ツタヤ運営企業に図書館委託 佐賀県武雄市, 共同通信, 2012年5月4日 図書館の運営、ツタヤに委託 佐賀県武雄市, 中国新聞, 2012年5月4日 図書館の利用カードはCCCのポイントカード「Tカード」へ切り替える。Tカードは若い世代に普及しており、図書館を使わない人が多いとみられる若年層を呼び込む狙いがあ
便利で楽しいFacebookアプリケーションが色々ある一方、中には怪しいものもあって、そういうところに個人情報を渡してしまうのは何かと危険。「自分でアプリを使っていないから大丈夫」というわけにもいかない。 友達が怪しいアプリに「私の友達の学歴とか近況とか住んでる場所とかチェックインした場所とか、全部取得してオッケーですよ☆」という許可を与えてしまったら、知らないところで自分の情報が取得されてしまう。これはFacebookの怖いところ。 友達がこんなアプリに許可を与えちゃったら超悲惨! 自分のせいで損をするのはいいけれど他人のせいで迷惑を被るのは困る。 実は「友達が利用しているアプリに、自分の情報をどこまで渡すか」というのを設定できる。目立たない項目だから、多分あまり知られていない。私も最近知ったよ。 Facebookにログインして、ヘッダのメニューから「ホーム > プライバシー設定」を
東京メトロの30代の男性駅員が昨年、駅の業務用端末を使って、ストーカーの標的にしていた30代の女性の乗車履歴を引き出し、インターネット上に公開していたことがわかった。女性から被害の申告を受けた東京メトロは昨年3月、駅員を懲戒解雇した。 女性によると、駅員は2009年ごろから、帰宅時に女性の勤務先で待ち伏せるようになった。食事などにしつこく誘われ、夜道で尾行されたこともあった。 女性は、氏名や生年月日を登録する記名式のIC乗車券「PASMO(パスモ)」を使っていた。昨年2月、ネットの匿名掲示板「2ちゃんねる」で自分の乗車履歴に関する投稿を発見。自宅の最寄り駅など約1カ月間に利用した首都圏の9駅と乗降した日付、利用したバス会社名などが書き込まれていた。 うち1駅はラブホテル街に近いとして、男性と性的関係を持ったのではという事実無根の内容も書かれた。女性の名前はなかったが、事実上個人を特定できる
総務省及び経済産業省は、本日、グーグル株式会社に対し、平成24年3月1日から適用する新たなプライバシーポリシーについて、我が国の多くの利用者に大きな影響を有することから、法令遵守及び利用者に対する分かりやすい説明等の対応をすることが重要である旨を文書で通知しましたので、お知らせします。 通知内容は以下のとおりです。 ・ 統合されたプライバシーポリシーに従ってサービスを提供する際には、利用目的の達成に必要な範囲を超えた個人情報の取扱いや個人データの第三者への提供を行わないとともに、利用目的の達成に必要な範囲を超えて個人情報を取り扱う場合や個人データを第三者に提供する場合にはあらかじめ本人の同意を取得するなど、個人情報についてその適切な取扱いが図られるよう、個人情報の保護に関する法律(平成15年法律第57号)を遵守することが重要であること。 ・ 電気通信事業法(昭和59年法律第86号)における
年明け早々、新聞等で報道されて一部で大騒ぎになり、おかげで、多くの会員が何度も何度も日弁連からの「同じようなFAX」攻撃に晒されることになった「某弁護士法人の個人情報誤掲載事件」。 事件発覚から1ヶ月経って、ようやく「報告書」が出されたようである。 「開示が禁じられている裁判員裁判に関する個人情報などを弁護士が誤ってネット上に掲載した問題で、弁護士の所属事務所は6日までに、誤掲載された個人情報は577件だったとの報告をまとめた。」(日本経済新聞2012年2月7日付け朝刊・第34面) 残念ながら、肝心の事務所のHPの方に何も掲載されていないというのは、説明責任の観点からどうなんだろう・・・という気もするのだが、報告を受けて、厳格な処分と、きちんとした再発防止策がなされ、かつ漏洩した個人情報の当事者に対して真摯な対応がなされているのであれば、一応は一段落、ということにはなるのだろう*1。 ちな
■ Wi-FiのMACアドレスはもはや住所と考えるしかない 目次 まえがき これまでの経緯 2つのMACアドレスで自宅の場所を特定される場合 SSIDに「_nomap」でオプトアウト? PlaceEngineはどうなった? まえがき 先週、以下の件が話題になった。 Greater choice for wireless access point owners, Official Google Blog, 2011年11月14日 Removing your Wi-Fi network from Google's map, CNET News, 2011年11月14日 グーグル、Wi-Fiネットワークの位置情報収集で対応策を公開, CNET Japan, 2011年11月16日 Google's WiFi Opt-Out Process Makes Users Navigate Technic
■ なぜGoogleストリートビューカメラ問題は嘘がまかりとおるのか 先月、日本弁護士連合会(日弁連)が、ストリートビューに関する意見書を発表しており、これについての記者会見が先日あったようで、ちらほら報道があった。 多数の人物・家屋等を映し出すインターネット上の地図検索 システムに関する意見書, 日本弁護士連合会, 2010年1月22日 第1 意見の趣旨 1 (略)行政機関から独立した第三者機関によるプライバシー影響評価手続を経ることがない現状において,新たな地域への拡大は控えられるべきである。すでに公開されている地域においては,当該自治体の個人情報保護審議会において,下記の2(2)と同様の事後調査がなされるべきであり,その判断は尊重されるべきである。 2 個人情報保護法,個人情報保護条例において,以下の改正がなされるべきであり,その改正までの間も,以下の運用改善がなされるべきである。
2010.2.1 ビジネス&IT Law 第6回 「ライフログ・行動ターゲティング広告とプライバシー」 弁護士 二関辰郎(骨董通り法律事務所 for the Arts) ■検索履歴・サイト閲覧履歴等の収集・利用 アマゾンや楽天などのショッピング・サイトを訪れると、そのサイトでかつて自分がチェックした書籍や商品が表示される。こういった機能は、便利だと考える人もいれば、余計なお世話だと感じる人もいるだろう。 かつてどのような用語の検索を行い、どのウエブサイトを、いつ、どのくらいの時間をかけて閲覧したのか。インターネットの利用にともなって、こういった情報を、検索エンジンの事業者や、閲覧先のウエブサイトの事業者等が蓄積・利用することが可能になった。情報の収集はインターネットの利用に限らない。携帯電話によって位置情報や、スイカやパスモ等によって移動履歴・行動履歴などが、収集・蓄積されている。 検索履
■ やはり「元データは保管していない」は虚偽だった 今日の朝日新聞朝刊「b4」面に、Google Earthについて米Google, Inc.担当副社長がインタビューに答えた記事が出ているが、この中で、日本のストリートビューについての質問にも応じて、次のように答えている。 ストリートビューについても尋ねた。(略)日本では昨夏始まり、塀越しに自宅が撮影されるなどプライバシーを中心に問題になった。 「道幅の狭さ、塀の中の庭、街のつくりなど、日米の違いをよく認識していなかった。例えば米国の家に表札はない。日本の事情に合わせ、変えるべき点は変えていく」 人の顔にぼかしを入れ、ユーザーから削除を申請された写真は表示されない。こうした写真の元データをグーグルはどうしているのか。 「保存しています。地図の間違いやぼかし技術の点検のためで、一定期間後に消去することになるでしょう。問題のないものは原則として
■ 東京都情報公開・個人情報保護審議会を傍聴してきた 2月15日補足:日付を間違えていた。「今日は」とは2月3日のこと。2月3日の日記として書いたつもりが、2月4日で登録してしまっていた(書き始めたのは2月3日だが書き上がったのは2月4日の朝だった)。既にあちこちからリンクされているので変更はしない。 ストリートビューについてグーグル社との意見交換があるというので、今日は休暇をとって、東京都情報公開・個人情報保護審議会の傍聴に行ってきた。録音も撮影もOKとのことで、公開の場であることが強調されていたので、今回はメモはとらず、会話は録音して、会場の様子を写真やビデオに収めてきた。 グーグル社からは、執行役員で広報部長の舟橋義人氏とポリシーカウンセルの藤田一夫氏が出席し、主に藤田氏が説明と質疑への応答にあたった。事務局から前回議事録等への補足の後、藤田氏から25分ほどのプレゼンテーションがあり
某雑誌から、ストリートビューに関する取材を受けました。私のほうでは、概略、以下のように述べました。 ストリートビューが、従来、存在したものとは大きく異なるのは、撮影対象が極めて網羅的で広範囲にわたっていることと、それを目にする人々が極めて広範囲にわたっていることであると思う。従来存在した、例えば防犯カメラでも、肖像権やプライバシー権の侵害、といったことが問題にされてきたが、防犯カメラの場合、撮影対象は自ずと限定される上、撮影目的も撮影されたものを見る者も限定されている。しかし、ストリートビューには、そのような限定がなく、従来存在したものとは異質なものである。 人は、公道から見えるからといって、肖像権やプライバシー権を放棄しているわけではない。例えば、ラブホテルに入ろうとしているカップルは、そのような姿をできるだけ他人に見られたくない、という意識を強く持っている場合が多いと思われるが、そうい
■ 日本の家屋の塀はグーグル社に適応して70センチ伸びるのか 前回の日記に傍聴録を記したように、その研究会では図らずもグーグル社の考え方を聞くことができた。そのタイミングから、Googleマップの「ストリートビュー」について述べられたものと解釈している人がいるようだが、このご発言は、携帯電話や固定通信網における個人識別子の扱いに関連する議論の文脈において出たものである。 さて、Googleマップの「ストリートビュー」だが、日本でも開始されたと知って早速いろいろなところを見てみたところ、それは予期していたのとは違うものになっていた。車一台スレスレ通れるか通れないかのような細い道にまで撮影車が積極的に入り込んでおり、特に予想外なことに、住宅密集地で、高い視点から塀の中を見下ろして撮影している。 これは通常の通行人の目線で見える風景との違いを比べる必要があると思った。そこで、現地を訪れて実際の塀
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