古くからのオフィス街と最新の商業施設が共存する東京・日本橋室町の一角に「レストラン桂」はある。店頭のガラスショーケースには定番料理の食品サンプルが並ぶ。少々年季が入っており、いい感じに色褪せているのが、いかにも街の洋食屋然として味わい深い。 しかしそのかたわらに目を移すと、そこにはどこかフレンチビストロを思わせるような瀟洒(しょうしゃ)なメニューボードも置かれている。その内容は日ごとの定食メニューなのだが、その内容を見るとそれは、メインディッシュにライスとみそ汁がつくようないわゆる町洋食の定食というよりは、かつて日本のフランス料理においてコース料理に定食という訳語があてられていた時代のその「定食」を思わせるクラシカルな内容がつづられている。 扉をくぐるとそこはちょっとした異世界だ。 店内には純白のクロスがかかったテーブルが整然と並び、まさに「レストラン」の、少し背筋が伸びるたたずまい。しか