学問のすすめの翻訳、四編 段落六 その三でござる。 現代語訳 例えば、近頃出版されている新聞や諸方から政府に対して行われる上申や建言もその一例である。出版に対する規制はそれほど厳しいという訳でもないのに、新聞の紙面を見れば政府の機嫌を損ねる様な内容は決して載せないばかりか、政府の行いに少しでも良い点があれば、それを実際よりも大げさに褒め称えて、まるで商売女が客に媚びを売っているかの様である。 また上申書や建白書を見れば、その文章は卑屈を極め、政府を崇め奉ることまるで鬼神の様な有様で、自らは罪人の様に卑しめ、同じ世界に住む人間同士とは思えない虚飾に満ちた文章を用いていながら、それを恥じる者すらいない。この様な文を読んでその人となりを想像すれば、単なる狂人としか思えない程である。 だがしかし、今この新聞を出版する者、あるいは政府に上申をする者達は、ほぼ全員が世に言う洋学者流の人々で、個人的な人