誰に言われるでもなく、何のためでもなく、ただ目の前の「かき揚げ」を撮り続けた男がいた。 ▼写真家 虫塗部 足清(むしぬりべ あしきよ) 1967年、精肉店のショーケースの中で生を授かり、Jリーグチップスを主食にスクスクと成長。幼少の頃、スーパーファミコンにオイキムチの汁をこぼしたことをきっかけに写真家を目指し始め、耳たぶの肉を “重くして”シャッターを押すという、非常に特徴的な技法「ダークネス・ディバイド」によって広く知られた。 彼をもっとも惹きつけた被写体は「かき揚げ天ぷら」であり、生涯で撮影した2890万枚に及ぶ写真のすべてが、何らかのかき揚げ天ぷらである(一番多いのはえび、次点は指サック。後期の作品は、そのほとんどが指サックのかき揚げであった)。 閑静な住宅街に赴いては、100%の声で「焼き肉ヨーデル」を歌うという奇行を繰り返し、住民たちに「今?」と思われていたというエピソードでよく