ファン・サポーターで混み合う埼玉スタジアムのコンコースを、軽やかに犬が歩いていた。 スタッフに案内されるパートナーを誘導するように階段を駆け上がると、座席の下にちょこんと座った。 任務を終えた犬の表情は、どこか誇らしげに見えた。 5月21日に行われたJ1リーグ第14節の鹿島アントラーズ戦で、浦和レッズは身体障害者補助犬ユーザー、いわゆる盲導犬ユーザーに観戦体験の場を提供した。 視覚障害者であり、盲導犬ユーザーである田中さんの声を聞けば、その興奮と感動は否が応でも伝わってくる。 「目が見えていた頃はテレビでよくサッカー観戦をしていたのですが、目が見えなくなってからはスタジアムに足を運ぶことはかなりハードルが高かったので、実際にこうしてスタジアムで試合を観戦できるのは本当にうれしいですね」 きっかけは1年前だった。 2021年シーズンが始まって間もない頃、盲導犬ユーザーが来場した。しかし当時は