インドネシアには「遺体と暮らす人々」がいる。インドネシア中部スラウェシ島に住むトラジャ族のことだ。彼らの奇異な風習には各国の記者が関心を寄せ、興味深いリポートを掲載している。 「おれの祖父に会ってみないか?」 もしあなたがスラウェシ島にあるトラジャ族の村を訪れたら、村人からこんな言葉をかけられるかもしれない。 実際、スペインの「XLセマナル」誌の記者は村を訪れたとき、そう声をかけられた。ずいぶんフレンドリーな人だとは思ったものの、その提案自体にはとくに驚かなかったという。だが、祖父に会った記者はただただ仰天した。 祖父だという人は死んでいて、目の前にあるのはその遺体だったからだ。 しかも、亡くなったばかりではなかった。死後数ヵ月、場合によっては何年も経ち、変わり果てた姿になっていた。それでも死者は、お茶の注がれたカップが置かれた食卓の前に座るなどして、普通に生活空間のなかにいる。 死者が家