昔の蝦夷人を、今はアイヌと言う。 その種族は全身毛深いが故に、また毛人とも称する。風俗は素直で礼儀に厚い。 男も女も髪をかぶって、耳にわっかを貫いている。男はひげが美しい。木の皮を使って織った衣を左前に合わせて着ている。外に出るときにもくつをはかない。雨の日にも傘を使わない。 常に弓矢を携えて、手槍を持ち、腰に小刀を帯びている。 女は布を使って額の上を包み、胸に「シドキ」という鏡をかけている。 人の妻となった者は、口の端と手の甲に、刺青をする。 肌を出すことを恥じて、水を渡るときにさえ、衣服のすそを持ち上げない。 子供に乳を飲ませるときも、布をたらして上より覆う。 婦人の役割は、薪を取り、「アヅシ」を織り、鳥・獣を飼うことをつとめとして、夫の漁猟を助けている者もある。 アイヌの性質はおおむねゆたかで、鋭くはないけれども、いつわり飾ることがないのは、本当に愛すべきである。 名を重んじることも