「ダイアローグ」 [著]ヴァージル・アブロー 2021年11月にヴァージル・アブローが心臓の珍しい癌(がん)によって41歳で早逝(そうせい)したとき、それはひとりの前途有望な黒人服飾デザイナーの死であると同時に、物事の見え方を変え、新しい価値観を生み出し続けたゲームチェンジャーの死を意味していた。本書は生前のアブローの理知的な声が聞こえる対話集である。 米国イリノイ州にガーナ移民の子として生まれ、大学で土木工学、大学院で建築を学んだ彼は、10代で熱狂したヒップホップとグラフィティをファッションに衝突させるところからキャリアを築いた。ミュージシャン、カニエ・ウェストとの長きにわたった協働は、学生時代に始まる。 早くからオリジナリティーより「編集」による再構築に意味を見いだし、安く仕入れた他社製品にカラヴァッジョの絵と「PYREX23」とプリントしただけのものを高い値段で販売したが、パイレック