『椿井文書 日本最大級の偽文書』(馬部隆弘 著)中公新書 ここに、歴史を様々書き換え続けた人物がおり、名を椿井政隆(つばいまさたか)という。江戸時代の後期に生き、過去の文書をひたすら偽造した。 文字だけではなく、絵も描いた。ついては大量の絵図までつくった。 一枚や二枚という話ではなく、その全貌はいまだに把握できないほどに大きいらしい。活動範囲は滋賀から大阪にまで及ぶ。 まるで荒唐無稽なことを書くのではなく、既存の記録になにかを足して、一見もっともらしい見かけを整えるということをする。ただしその際、歴史家が子細に確認すれば明らかにおかしいというところをつくっておく。もしもの場合、あれはたわむれにつくったのだと弁解するための工夫らしい。 改竄は、売れ線を狙ったようだ。狭くは、どこどこの山の帰属はどちらの村かという争いを左右するような文書を偽造した。需要もどうもあったらしい。ただしそれだけではな