1.就業規則の意義 民間企業で働いている人の多くは「就業規則」という言葉を聞いたことがあるのではないかと思います。 しかし、何を以って就業規則と言うのかは、実は、それほど良く分かっているわけではありません。例えば、水町勇一郎『労働法』〔東京大学出版会、第3版、令5〕178頁には、次のような記載があります。 「就業規則の定義について定めた法律規定はない。学説上も就業規則の定義そのものについて詳しく論じたものはなく、解釈例規においても就業規則の定義を定めたものは見当たらない。」 このように実体の分からない概念ではありますが、実務的には、ある文書が就業規則に該当するのか否かは、極めて重要な意味を持ちます。それは、労使間の法律関係に直接的に関わってくるからです。 例えば、労働契約法7条1項本文は、次のとおり規定しています。 「労働者及び使用者が労働契約を締結する場合において、使用者が合理的な労働条