経営戦略、その中でも特に競争戦略について、一橋大学ビジネススクールの楠木建教授がわかり易く解説した本が出ている。『ストーリーとしての競争戦略 ―優れた戦略の条件』である。 この本の主張は「優れた競争戦略はストーリーとして語られる」というものである。戦略論というと概念的な抽象論の域を出ない本が多い中、この本では具体的なビジネス事例を数多く取り上げ、その背後にある競争戦略の論理を丁寧に読み解いていく。非常に具体的・実践的でわかり易い本となっている。 この本自体もストーリーとして、楠木先生が読者に話しかけるような調子で書かれている。そのストーリーを最初から最後まで順番に読んで欲しいというのが著者からの指示である。最初に読む時はそれでもよいのだが、500ページもある大著である。読み返した時にどこに何が書いてあったか、一目では探しにくい。読み返す時の道標とすべく、議論の要点とそれが書かれていた箇所を