1920年代、カリフォルニアから国境をまたいだメキシコの町、ティフアナにシーザー・カルディーニ(1896−1956)経営のレストランがあった。メキシコ生まれのシーザーさんは当時、サンディエゴに住んでいたが、レストランは国境の南に持っていた。なぜなら、当時米国は禁酒法時代。サンディエゴに店を持っていたのではアルコールを出せなかったのである。 とある年の7月4日、米国の独立記念日の夜。年に一度のお祝いを祝うため、国境を越えてやってきたアメリカ人たちで歓楽街は大にぎわい。とうとう、店の食材が切れてしまった。しかし、そこは創意工夫とひらめきに定評があったシーザーさんのことだ。試行錯誤しながら手近にあった材料を使い、新種のサラダを作ってみた。 といって、単なる思いつきだったわけではない。イタリア料理のシェフでもあったシーザーさんは、実は前々からロメインレタスにレモン汁、アンチョビ、オリーブオイル、チ