「なぜ夏は暑くて、冬は寒いのか」といった実はよくわかっていない日常世界の法則を丁寧に解くことから本書ははじまる。 夏が訪れるのは、歳差(さいさ)運動で地軸が傾き、太陽光線が当たりやすくなる。空気中の「分子の動き」が肌に当たることで人や温度計は暑さを感知する。地球の仕組みを知ることは、太陽の核融合、約137億年前のビッグバンを解することにも繋(つな)がる。 物理学の法則はシンプルで美しい。宇宙の謎に迫った科学者達の歩いた道を、読みながら辿(たど)れるので、迷路に入り込むような不安感はない。 章が進むにつれ、宇宙全ての因果関係を記述可能にしようとするほど、なぜここまで人間に「ちょうどよく」宇宙が存在しているのか、という大問題に行き着く。宇宙が存在することへの科学者達の問いは、なぜ私たちが生きているのかという根本的な問いと等価になる。神的な存在を持ち出さないことには説明が出来ないほど、人間にとっ