刑法は国民の生命や財産を守るための法律であり、それを侵した人間は罰せられ罪を償うべきだ。 これは多くの国民が刑事行政に対して持っている常識だろう。ところが私たちの社会にはこの常識が通用しない人たちがいる。本書は、そうした人たちとその周辺を丹念に取材した新聞記者らの記録である。 「侵入盗や車上荒らしで前科10犯、刑務所暮らし通算20年の50代男性」「出所するとすぐ無賃乗車や賽銭(さいせん)泥棒を繰り返す20代男性」「更生保護施設を飛び出し駅のロッカーに放火した40代女性」。これらすべて本書に登場する人たちだ。相当な極悪人に見えるが、全員何らかの障害を抱えている。たとえば、食べるための万引きは「しようがないこと」だと言い、息子の不始末をひたすら詫(わ)びる母親の脇でへらへら笑っている。さらには遠くの刑務所への収監は楽しい旅行感覚で行くなど、読むほどに頭が混乱してくる。このような累犯者を何度も罰