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ブックマーク / davitrice.hatenadiary.jp (16)

  • 「愛のあるセックス」はなぜ必要か(読書メモ:『性と愛の脳科学』) - 道徳的動物日記

    性と愛の脳科学 新たな愛の物語 作者:ラリー・ヤング,ブライアン・アレグザンダー 発売日: 2015/12/09 メディア: 単行 このの概要については先日の記事でさくっと触れているので、いきなり題から*1。 このでまず面白かったのが、第4章から第6章にかけて、女性と男性が異性に対してそれぞれに抱く愛情の質の違いを分析するところだ。 第4章の「母性を生む回路」では、自分が産んだ子供を世話したいと母親が思う感情、つまり「母性愛」の存在が脳科学の観点から説明される。端的にいえば、母性愛とはプロラクチンとオキシトシンというホルモンによって引き起こされる。オキシトシンが母親に与える影響の具体例は、以下のようなものである。 人の母親が赤ん坊を胸に抱いてやる時、母親は赤ん坊の顔と目を見つめ、赤ん坊もしばしば、母親の顔を見つめ返す。母親は赤ん坊の泣き声や、赤ん坊の声に耳を傾け、自分からも声をかけ

    「愛のあるセックス」はなぜ必要か(読書メモ:『性と愛の脳科学』) - 道徳的動物日記
  • 「インターセクショナリティ」が対立を招く理由 - 道徳的動物日記

    The Coddling of the American Mind: How Good Intentions and Bad Ideas Are Setting Up a Generation for Failure (English Edition) 作者:Lukianoff, Greg,Haidt, Jonathan 発売日: 2018/09/04 メディア: Kindle版 先日から、社会心理学者ジョナサン・ハイトと憲法学者グレッグ・ルキアノフの共著、『アメリカン・マインドの甘やかし:善い意図と悪い理念は、いかにしてひとつの世代を台無しにしているか』を読んでいる。Amazonのほしいものリストでもらったものだ。ありがとう*1。 2017年に出版されたなのだが、その時期にアメリカの大学で「ポリティカル・コレクトネス」が引き起こしていた様々な問題の事例を網羅的に紹介しつつ、その背景にあ

    「インターセクショナリティ」が対立を招く理由 - 道徳的動物日記
  • 有徳に生きることと、幸福に生きることの関係 - 道徳的動物日記

    徳は知なり: 幸福に生きるための倫理学 作者:ジュリア・アナス 発売日: 2019/03/25 メディア: 単行 ジュリア・アナスの『徳は知なり:幸福に生きるための倫理学』については過去にも紹介記事を書いているが、今回は、徳と幸福について論じられている八章と九章の議論を集中的に紹介しよう。 このの八章では、古代ギリシャにおける「幸福(エウダイモニア)」の概念について説明が行われている。 アナスによると、エウダイモニックな幸福に関する思考とは、人生についての「日常的な視点」と「組織的な視点」を包括することから始まる。 普段のわたしたちは、自分がする行為の意味を「朝に起きるのは、仕事に行くためだ」といったように、直線的な時系列で単純に考える。しかし、「そもそも、なぜわたしは仕事をしているのだろう?」と深く考えるときもある。その問いは、「仕事をしている理由はよいキャリアを得たいからだ、よいキ

    有徳に生きることと、幸福に生きることの関係 - 道徳的動物日記
  • 左派の思想と自己啓発が相反する理由(読書メモ:『生き抜くための12のルール:人生というカオスの解毒剤』) - 道徳的動物日記

    人生というカオスのための解毒剤 生き抜くための12のルール 作者:ジョーダン・ピーターソン 発売日: 2020/07/07 メディア: Kindle海外では大ベストセラーになったであり、日でも熱心に薦める人が何人かいたので、ほしいものリストから送ってもらった。 しかし、結論から言うと、かなり期待はずれ。 著者のジョーダン・ピーターソンは心理学者で、前著の Maps of Meaning: The Architecture of Belief は神話や宗教に関する著作であるようだ。 そして、「インテレクチュアル・ダーク・ウェブ」で「反ポリコレ」な論客としても有名である*1。 『生き抜くための12のルール』はタイトル通りの自己啓発書であり、ポリコレとか政治とかが直接的には関わらないが、後述するように、そこで書かれている人生指南の内容は左派的な思想とは相反するものだ。 そして、ビジネス書

    左派の思想と自己啓発が相反する理由(読書メモ:『生き抜くための12のルール:人生というカオスの解毒剤』) - 道徳的動物日記
  • 女性のための進化心理学?:『ジェンダーの終わり』読書メモ(2) - 道徳的動物日記

    The End of Gender: Debunking the Myths about Sex and Identity in Our Society (English Edition) 作者:Soh, Debra 発売日: 2020/08/04 メディア: Kindle版 先日の記事で書いたように、『ジェンダーの終わり:性とアイデンティティに関する迷信を暴く』ではトランスジェンダーやノンバイナリーに関する話題がメインとなるが、第7章や第8章ではヘテロセクシャルの女性や男性に関する進化心理学的な議論がなされる。6章以前のセンシティブな議論に比べると他愛のない話題になるのだが、個人的には7章以降の方が面白かった。 第7章では「デートとセックスにおいて女性は男性のように行動しなければならない」という、ジェンダー平等的な規範が「迷信」として批判される。 この章で著者が主張しているのは、「恋愛

    女性のための進化心理学?:『ジェンダーの終わり』読書メモ(2) - 道徳的動物日記
  • 読書メモ:『恋人選びの心:性淘汰と人間性の進化』 - 道徳的動物日記

    恋人選びの心―性淘汰と人間性の進化 (1) 作者:ジェフリー・F.ミラー 発売日: 2002/07/15 メディア: 単行 davitrice.hatenadiary.jp 『Virtue Signaling』の書評で書いたようにわたしはジェフリー・ミラーは文筆家としてはあまり好ましく思っていないところがある。『恋人選びの心』も、「人間に特有の知性や言葉や芸術性やユーモアはすべて性淘汰の産物として進化してきた」という理論でなんでもかんでもされており、「牽強付会」という感が付きまとう。 とはいえ、ミラーが提示しているのあくまで仮説であり「この仮説を使えばあんなこともこんなことも説明できますよ」というデモンストレーションとして、批判は承知のうえで、あえていろんな物事について「性淘汰とシグナリング」の理論を当てはめて説明しているのかもしれない。 このの1〜3章では、ダーウィンによる性淘汰の発

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  • 「自殺」の思想史(読書メモ:『Stay: A History of Suicide and the Philosophies Against It』) - 道徳的動物日記

    Stay: A History of Suicide and the Philosophies Against It (English Edition) 作者:Jennifer Michael Hecht 出版社/メーカー: Yale University Press 発売日: 2013/11/01 メディア: Kindle版 このの副題の「自殺と、それに反対する哲学の歴史」が示す通り、自殺について西洋の伝承や哲学者や知識人たちはどのようなことを語ってきたか、という思想史を軸に展開するである。 このの序文では、著者の大学時代からの二人の友人が立て続けに自殺した出来事について語られている。友人たちが自殺した後、著者は自殺を考えている人たちが自殺を止めるように説得するエッセイをブログに掲載して、それが Boston Globe 誌にも掲載された*1。その後に過去の西洋の思想や自殺について

    「自殺」の思想史(読書メモ:『Stay: A History of Suicide and the Philosophies Against It』) - 道徳的動物日記
  • 読書メモ:『哲学者が走る 人生の意味についてランニングが教えてくれたこと』 - 道徳的動物日記

    哲学者が走る: 人生の意味についてランニングが教えてくれたこと 作者:マーク ローランズ 出版社/メーカー: 白水社 発売日: 2013/09/14 メディア: 単行 私は子供の頃から喘息を患っており、すこしでも走るだけですぐに息が切れてしまいしんどいことになる。そのため、ランニングなんてしたことはほとんどないし、これからも行わないと思う。 そんな私がなんでこのを手に取ったかというと、著者の前著である『哲学者とオオカミ』が面白かったからだ。だが、このは、私がランニングに興味がないということを差し引いても、焦点がぼけているし同じ主張をくどくどと繰り返すし主張されている内容自体もかなり凡庸だしで、『哲学者とオオカミ』に見られた独自性は失われていると言っていいだろう。 基的には、著者の人生における様々な場面におけるランニングやマラソンレースへの出場などの経験を綴りながら、「自由」や「衰え

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  • 倫理学の理論や知識と、実際の生活との齟齬や乖離について(読書メモ:『哲学者とオオカミ』) - 道徳的動物日記

    哲学者とオオカミ―愛・死・幸福についてのレッスン 作者:マーク ローランズ 出版社/メーカー: 白水社 発売日: 2010/04/01 メディア: 単行 哲学者である著者がオオカミの子どもを引き取って「ブレニン」と名付けて、アメリカやアイルランド、イギリスにフランスと居住地を変えながらもずっとブレニンと暮らし、ついにブレニンが臨終する際までの生活の記録…を軸としながら、ブレニンとの交流や観察を通じて培われた著者の思索の記録もふんだんに書かれており、様々なテーマについての哲学的エッセイという趣もあるだ。 オオカミを観察することによって動物と人間との違いを再認識して、そこから「人間とは何か」「愛とは何か」「文明とは何か」といったことを改めて考えていく、という構成である。また、哲学のなかでも「道徳」や「幸福」や「人生の意味」など、倫理学的なテーマについての思索が中心となっている。 なにかしら

    倫理学の理論や知識と、実際の生活との齟齬や乖離について(読書メモ:『哲学者とオオカミ』) - 道徳的動物日記
  • ネット言説における「合理性」信奉 - 道徳的動物日記

    もしかしたらこのブログの読者ならご存知かもしれないが、私にはインターネット中毒の傾向がある。 特に、Twitterはてなブックマークはついつい見てしまう。 会社でフルタイムで働きだすようになってからはを読める時間が減った一方で、インターネットを見る時間は増えてしまった(仕事の合間にもブラウジングしてしまうことは可能なためだ)。 だが、中毒であるということは、なにも好きこのんで意欲的にネットを見ている訳ではないということだ。 むしろ、Twitterはてなブックマークで見れるような人々の意見やコメントにはうんざりさせられることが多い。 ところで、ここ数ヶ月は、生活習慣や生活環境を変えたことで、学生時代ほどではないが多少は読書をする時間を取り戻すことができた。 そして、しばらくネットの海にひたった後に改めて読書を再開すると、ネットに書かれていることとに書かれていることとの傾向の違いを以前

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  • 読書メモ:『AI時代の労働の哲学』 - 道徳的動物日記

    AI時代の労働の哲学 (講談社選書メチエ) 作者:稲葉振一郎 出版社/メーカー: 講談社 発売日: 2019/09/11 メディア: Kindle人工知能と労働の哲学、といえば「人工知能が発達してシンギュラリティを起こして人間を凌駕する存在になる」ことを前提として、そこから「社会の生産性がすごくなるので人間は働かなくて良くなりみんなが好きなことをして生きていけるようになる」的な楽観論か「仕事人工知能に代替されることない一握りのエリート階層の人間と、仕事を奪われて失業してしまう大多数の底辺階層の人間とに分かれてしまう」的な悲観論のどっちかを唱える、というのがありがちだ。流行りのベーシックインカムなんかも、前者の場合には人間が好きなことをして生きていけるのを保証するというポジティブなイメージで描かれるが、後者の場合は底辺階層の人間たちが最低限の生活を過ごせるようにするためにお情けで与えら

    読書メモ:『AI時代の労働の哲学』 - 道徳的動物日記
  • 「"女性の上昇婚志向"論」についての雑感 - 道徳的動物日記

    このブログではこれまでにも何度かジェンダー論について話題にしてきたし、ジェンダーや恋愛に関して論じたについての読書メモなども残している*1。また、ブログには取り上げなくても、進化生物学や社会科学などの観点から男女論や恋愛論や結婚制度などについて論じたの数々には目を通している。 このブログの影響力は大したものではないし、何冊のやネットの論調などに目を通した上で書いた雑感程度のものでしかなく、論調も我ながら曖昧なことが多い。だが、たとえばnoteで「女性の上昇婚」について書かれたいくつかの記事を見てみると、より多くのデータなどを集めたり分析したりしたうえで強めで一貫した主張を展開しているものがいくつか書かれており、多くのブクマが付けられるなど注目を浴びている*2。 note.mu note.mu 上述の記事にせよ諸々のにせよ、進化的なり経済的なり社会的なりの何かしらの要因で、女性は自分

    「"女性の上昇婚志向"論」についての雑感 - 道徳的動物日記
  • 「有害な男らしさ」論のイデオロギー - 道徳的動物日記

    まとまった文章を書く気力がないので、最近の議論を見ていて思ったことをだらだらと。 日のインターネットでは「男のつらさ」とか「男性の孤独」というトピックは周期的に話題になるが、今月は特にそれらの話題についての議論が盛んだ。 議論のきっかけは、noteで公開された「男性のつらさの構造」という記事であるようだ。 note.mu また、「男性のつらさ」という話題からは離れるが、今月は「有害な男らしさ」についての議論もちらほらと目にするようになった。例えば、例えば、月頭に公開された、池田小学校殺人事件の犯人である宅間守について分析した記事ははてブ数も500を超えており、かなり多くの人の目にとまったようだ。 gendai.ismedia.jp 「有害な男らしさ」の解決策としては「文化教育を変化させたり、男性が自分の弱さや苦悩を素直に表明できる環境を作ることで、男性を有害な男らしさから解き放とう」と

    「有害な男らしさ」論のイデオロギー - 道徳的動物日記
  • トロッコ問題批判批判 - 道徳的動物日記

    先日に森村進の『幸福とは何か』 (ちくまプリマー新書、2018年)を読んでいたら、後半の方で以下のような記述があった*1。 幸福とは何かを考えるにあたって、私は書でさまざまの思考実験を利用してきましたが、その中には非現実的な例も少なくありませんでした。この方法は現代の哲学、特に分析哲学と呼ばれている著作の中ではごくありふれたものです。しかし世の中にはそれに反発する人も少なくありません。彼らは「そんな自体は実際には発生しない」とか「その例におていは<これこれしかじか>と前提されているが、<これこれしかじか>ということが当事者にどうして確信できるのか?」などと言って、思考実験に向かい合おうとしません。思考実験は地に足のついた思考の敵だ、と彼らは信じているのでしょう。 『幸福とは何か』ではトロッコ問題はほとんど出てこなかったが、上記のような批判は、特にトロッコ問題に対して向けられがちだ。典型的

    トロッコ問題批判批判 - 道徳的動物日記
  • 「科学から政治的活動へと変貌させられる人類学」by グリン・カストレッド - 道徳的動物日記

    www.popecenter.org 今回は、カリフォルニア州立大学イーストベイ校の人類学者グリン・カストレッド(Glynn Custred)による記事「Turning Anthropology from Science into Political Activism(社会科学から政治的活動に変貌させられる人類学)」を紹介する。カストレッドは、言語人類学やフォークロアを専門に研究している人類学者であるようだ。 「科学から政治的活動へと変貌させられる人類学」by グリン・カストレッド 1960年代から、アカデミアの内部では学術的な研究を社会変革の道具に変えてしまうことを目的とした運動が続いている。マルクス主義・フェミニズム・西洋文明全般に対するトレンディな反感といった、知的にファッショナブルな考えがこの運動を引き起こしていた。やがて、この運動は人文学を占拠して社会科学にも深刻な影響を及ぼすよ

    「科学から政治的活動へと変貌させられる人類学」by グリン・カストレッド - 道徳的動物日記
    takamatumoto7
    takamatumoto7 2018/06/17
    人類学について
  • 心理学者ポール・ブルームの反・共感論 - 道徳的動物日記

    今回は心理学者ポール・ブルーム(Paul Bloom)の議論を紹介する。ブルームは乳幼児の心理と道徳心理を主に研究しており、「共感」に基づいた道徳は恣意的で頼りなく、真に道徳的に振る舞うためには感情よりも理性を優先しなければいけない…的な主張をあちらこちらで言っている人である。人の主張を要約した動画も公開されている。 gigazine.net この記事では、ブルームが2013年にニューヨーカー紙(The New Yorker)に発表した記事と2014年にボストン・レビュー(Boston Review)に発表した記事を、内容を大幅にカットしたり大雑把に要約したりしながら適当に紹介する。どちらの記事もかなり長い(特にボストン・レビューの記事はブルームの文も長いだけでなく、12人の有識者によるブルームへのレスポンスと、それを受けたブルームのリプライも含まれている)が、英語が読める人は原文を参

    心理学者ポール・ブルームの反・共感論 - 道徳的動物日記
    takamatumoto7
    takamatumoto7 2018/06/16
    “人々が怒りに任せて動くよりも、人々が理性を保ち穏当な同情をしつつ怒りを抑制できる方が、世の中は優しくなり世界は善い場所になるだろう。”
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