文字を持たない人々の言葉であっても、その話し手がいなくなった後に痕跡を残すことがあります。その1つが地名です。 かつて東北地方の少なくとも北半分にアイヌ語を話す人々が住んでいたと断言できるのは、そこに北海道と同じ、アイヌ語だと思われる地名が数多く残されているからです。 「北海道と同じ」とわざわざ言うのは、アイヌ語のように音の構造の比較的簡単な言語は、この制限を外すと語呂合わせのような感じで、いくらでも「アイヌ語地名」が認定できてしまうからです。 たとえば100年以上前から富士山のフジはアイヌ語だとか、阿蘇山(あそさん)のアソはアイヌ語だということが言われてきました。それに対するいちばん簡単な反論は、北海道にも火山はあちこちにあるが、1つもフジだとかアソだとかという山はないということです。 アイヌ語の地名は地形の説明 アイヌ語の地名というのは基本的に地形の説明です。襟裳岬(えりもみさき)の襟
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