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ブックマーク / note.com/wonosatoru (3)

  • 「自分語り」より「他人語り」|ヲノサトル

    教えている美術大学で、ある時期、映像制作のワークショップを担当していた。 「なんでもいいから自由に」と作品を作らせると、「自分」や「内面」を語り始める学生が多かった。みんな「オリジナリティをどう表現するか」に悩みまくっているようだった。 実家のそばの公園の景色とか、ペットのとか、幼少の自分が波打際に佇むビデオテープのコピーとかを、ノスタルジックな音楽に合わせて編集してきました。みたいな感じの、ザ・心象風景的なイメージ映像。観せられる側としては「はあ、そうですか」としか言いようがない。 そこである時期、ドキュメンタリー作品を撮る課題に切り替えた。テーマは「他人」に限定。 歴史や社会についてのドキュメンタリーは時間もかかるし難しいが、人間が対象なら短期間でもそれなりに掘り下げられるのではないか、という意図だった。 すると、ものすごく面白い作品が出現し始めた。 ゴミ回収業に就いた同級生、実家の

    「自分語り」より「他人語り」|ヲノサトル
  • もぐり|ヲノサトル

    大学では「もぐり」という言葉を聞くことがある。 履修登録していない講義を学生が自主的に聴講すること、あるいは学生以外の一般人が学外からキャンパスに入り込んで勝手に聴講することを言う。 前者についての判断は大学にもよるだろうが、後者について正論を言うならば、厳しい入試を経て正規に入学し、金銭を納入している学生に対する公平性の観点から、フリーライド(ただ乗り)の聴講を認めるわけにはいかないだろう。 とはいえ、そういう杓子定規な話じゃなく、あくまで個人的な音としては。 指導要領があるわけでもなく何を教えろと言われているわけでもないのに、1コマ90分しゃべり倒す教員なんて仕事をやってるのは、その内容が面白くてタメになると信じているからだ。学生であろうとなかろうと、聞きたい人がいるならぜひ聞いてほしい。 だからといって簡単に公開できないのは、講義内でふんだんに紹介している映像やら音楽やらの資料が、

    もぐり|ヲノサトル
  • 新幹線の好敵手|ヲノサトル

    新幹線に乗った。 機材や楽器があるので、最後尾席を予約しておき、座席後ろの空白地帯にトランクや楽器を詰め込む作戦に出たのだが、同じことをしている御仁と隣り合わせた。 年の頃40代、Tシャツにスニーカーとラフな格好だが、腕時計とバッグはブランド品だ。楽器こそ見当たらないが、何らかの業界人と見受けられる。 この隣人、座席に着くなり、小ぶりのキャンバス地のバッグを取り出した。チラッと見えた内張りは銀色。保冷バッグだ。(プロだな)そう直観した。 果たして、彼が白ポリ袋からガサガサと取り出したのは、泣く子も黙る駅弁界のスーパースター「崎陽軒のシウマイ弁当」。 件の保冷バッグからは、てらいもなくアサヒスーパードライの350ml缶を取り出してその横に置いた。王の道と書いて王道。何人たりとも否定できない、まずは盤石の組み合わせである。 一方、シウマイ弁当を横目で見ながら当方が取り出したのは「幕の内弁当」。

    新幹線の好敵手|ヲノサトル
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