これはフィクションなんだけど、10年来の友人と飲みに行った。彼女とはインターネットでの同人活動を通じて知り合い、お互い年も近かったのもあって定期的に会っていた。お互いが当時のジャンルから離れても交流は続き、なんだかんだで半年に一回は会っている。 「これまで言えなかったんだけど」と彼女は話し出す。 「Fさんって覚えてる?」「えーと、ジャンル内ピコ手の。ちょっとぷにっと系の絵を描く…男の人だったっけ?」ピコ手というのは大手の逆のこと。「そう。仲よかった?」「いや、オフ会で一回か二回会ったことがあっただけかな」 よく言えば優しそうな、悪く言えばあまり印象に残らないひとだった。背がすっと高かったことは覚えている。確か年齢は20歳そこそこだったろうか。 「あのね」「うん?」 彼女は一回ためらって、 「私、Fさんと付き合ってたことがあるの。あのジャンルにいたころ」 「んん??」 首を傾げてしまう。あの