『生命倫理のフロンティア』(粟屋剛・金森修編 シリーズ生命倫理学第20巻 第6章)、2013年、95~114頁 まるごと成長しまるごと死んでいく自然の権利 :脳死の子どもから見えてくる「生命の哲学」 森岡正博 * PDFダウンロード *【数字】の箇所で、印刷頁が変わります。数字はその箇所までの頁数です。 はじめに 本章では、脳死臓器移植を素材としながら、人間にはまるごと成長しまるごと死んでいく自然の権利があるということを述べていきたい。私がこの考え方をはじめて公にしたのは、臓器移植法改正についての国会審議が大詰めを迎えていた2009年7月7日の参議院厚生労働委員会の参考人発言においてであった。いまから振り返ってみれば、この考え方は、20年以上脳死臓器移植に関わってきた哲学者としての私の思索が凝縮されたものだった。以下の考察で、このテーマを掘り下げて考えてみたい。なお、本章で焦点となるのは、