木原孝一という詩人がいる。 故人であるから「いた」と過去形で書くべきなのであろうが、作品は生き続けているので、あえて現在形で書いてみる。 木原孝一は戦後の詩史の中心であった「荒地」同人であり、わが父親の親友でもあった。 木原氏についてはいろいろな思い出がある。 私が幼児の頃、川崎の社宅住まいだったのであるが、その当時、この「木原のおじちゃん」はよく家に遊びに来たのを覚えている。子供心に「いつもお酒飲んでる」「声がおおきい」と思っていた。 ある時など、私が母親に叱られて玄関先に閉め出されていたところへ「おじちゃん」はやってきた。 「木原のおじちゃん」は来るなり玄関の前で仏頂面(多分)で座り込んでいる小さな女の子を抱えあげ、無理やり肩車をして、勝手に玄関をあけて我が家に凱旋したのであった。 「この子、玄関に捨ててあったぞ~」と叫びながら。 私は泣きながら「捨ててあったんじゃない!」と「おじちゃ