昨年末、2024年度予算が閣議決定した。うち水産予算は前年度補正を併せて3169億円と、過去最高だった前年の3208億円(前年度補正含む)をやや下回るものの、3100億円台を維持した。18年度まで水産予算は2300~2400億円程度であったが、同年末に国会を通過した漁業法の改正に歩調を合わせ、予算は一気に増額した。 漁業法の改正で目指されたのは、科学的な資源管理に基づく水産資源の回復と水産業の持続的な発展であると言える。これまで国が資源評価対象としていたのは計50魚種で、漁獲総枠(「漁獲可能量(Total Allowable Catch: TAC)」と呼ばれる)を決めて管理を行っていたのは8種に過ぎなかった。 水産庁によると、資源評価対象を23年度までには200種程度に拡大(22年3月現在192種)するとともに、資源評価方法についても過去数十年のトレンドから「高位」・「中位」・「低位」と分
除草剤グリホサートと並んで、批判の的になっているネオニコチノイド系殺虫剤。ハチを殺す、ヒトの健康を害する、と指摘されています。しかし、こちらも科学的事情、各国の制度は非常に複雑です。「欧州連合(EU)は禁止しているのに、日本は……」とよく語られますが、それほど単純なストーリーではなく、実際にはEUでも使われています。国内外の主な動きをわかりやすく解説します。 スイカの花に来たミツバチ。ハチは授粉を介して作物生産に大きな役割を果たしてきた(Stephen Ausmus, USDA Agricultural Research Service) ヒトにはより安全な農薬? ネオニコチノイド系殺虫剤(以下、ネオニコ)は1990年代に登場しました。日本では現在、7成分が農薬として登録され、よく使われています。それまで多く使われていた殺虫剤に比べ利点が多かったからです。 まず、従来の殺虫剤に比べてヒトへ
感染者442人、死者7人(5月31日現在)――。コロナ禍に対して、〝神対応〟をとも言える危機管理能力を発揮した台湾。人口が約2400万人と、日本の約5分の1とはいえ、同時期に日本で感染者1・7万人、死者900人が出ていたことを考えると、台湾の数字がいかに驚異的かが分かる。 台湾で何かが起きていたのか? 世界を驚かせた〝台湾モデル〟を徹底解剖した『なぜ台湾は新型コロナウイルスを防げたのか』(扶桑社新書)を7月2日に緊急出版したジャーナリストで大東文化大学特任教授の野嶋剛氏に話を聞いた。 新書とはいえ270ページに及ぶボリュームでの仕上がりは驚異的。野嶋さんは出版の動機についてこう語る。 「2カ月で仕上げました。その間は、僕にとっても賭けでした。台湾に学ぶといっても、執筆中に予期せぬ大変化が台湾で起きる可能性もあります。一方で、〝台湾屋〟としての使命感もありました(野嶋さんは朝日新聞記者時代に
危機管理といえば、真っ先にイメージされるのが軍事や安全保障、外交問題などだが、いま起きている新型コロナウイルスの世界的拡大もまた、国民の生命・財産に大きな影響を及ぼしかねないリスクを有する重要問題であり、政府の危機管理能力が問われることは言うまでもない。特に、日々の生活に関わるマスクの確保に世論は敏感に反応しており、マスクはまさにコロナ時代の「戦略物資」となっている。 コロナの世界的流行で、どの国でも起きているマスク不足。韓国政府はマスクを「戦略物資」と指定することを検討すると明らかにした。日本政府も原則マスクの転売を15日から規制する閣議決定が行われたが、現在マスクは日本では入手困難な状況が続いている。コロナ流行の兆しがある米国でもマスクが不足は始まっていると伝えられている。 現時点でコロナの流行を感染者が50人未満で新たな感染者の発見もこの数日間は起きておらず、中国と近接していながら拡
どの薬局にどれだけマスクの在庫があるか一目でわかるアプリ 一方、台湾では2月6日からマスクの実名購入制を導入する準備も旧正月中に完了させた。購入できるのは大人1人につき週に2枚まで。台湾は国民すべてにID番号がある。オンラインで健康保険と紐付けさせられる特定薬局や保健所でIDを提示しながら1週間に1人2枚のマスクが買えるようにした。大行列を回避するため、ID末尾の奇数番号と偶数番号で購入日を分けた。回線がパンクしないように巨大なサーバーを買いつけたという。 同時に、台湾の「天才IT大臣」とも称される唐鳳は、どの薬局にどれだけマスクの在庫があるか一目でわかるアプリを開発した。開発にかかった時間はわずか48時間だったという。多くの民間のプログラマーが、唐鳳が立ち上げたオープンソース式のソフトウエア開発に参加し、2月6日の実名制導入と同じ日にアプリも立ち上がった。アプリの運用にあたっては、唐鳳は
批判も覚悟のうえで自ら情報提供 山崎製パン株式会社(ヤマザキ)が3月、一部の角食パンに食品添加物「臭素酸カリウム」を使い始めました。臭素酸カリウムは遺伝毒性発がん物質とされ、添加物批判の記事や書籍等では必ず、猛批判される物質。同社は、臭素酸カリウムを2014年以降は使っていませんでしたが、使用再開です。 しかも、2月25日からはウェブサイトで、自主的に使用再開を情報提供し始めました。法的には、告知する義務はないのに……。 さっそく同社に尋ねました。「発がん物質を食品に使う? 週刊誌などからまた、猛烈にたたかれますよ」。答えは、「もっとおいしいパンを提供するために使いますが、安全は絶対に守ります。詳しく説明しますので、なんでも聞いてください」。 さっそく取材しました。添加物はイヤ、と思う皆さんにこそ読んでもらいたい、科学的根拠に基づく企業の毅然とした判断が、ここにはあります。 食感改善に絶大
お知らせ:本連載をまとめた書籍『外食もお酒もやめたくない人の「せめてこれだけ」食事術』(佐藤達夫 著)が2020年1月18日に発売されます!(※予約受付中)詳細はこちら 評価が大逆転した栄養素:食物繊維 栄養学は豹変する……これは私が尊敬する栄養学者の言葉。たしかに栄養学は、数学や哲学や天文学などに比べれば、はるかに歴史の浅い学問だ。近代栄養学は大きな世界大戦(第一次世界大戦、第二次世界大戦)で飛躍的に進歩したのだから、まだ百年チョットの歴史しかない。その割には、人々の生活に大きな影響を与えるので、とりわけ、このところ急速に進歩している。 そのため、少し前までは「悪玉」といわれていた物が急に「善玉」になったり、その逆だったりと、その評価が大きく変わることも少なくない。食物繊維もその1つだろう。 そもそも食物繊維は「繊維状のいかにもスジスジした成分」のことではない。食物繊維の定義は「ヒトの消
議論や異議申し立てなく、上位者の意思・指示命令に従う代わりに、組織から守られ、定年までの雇用やキャリアが保障される。日本人サラリーマンの基本的な立場である。権威への服従・忖度は、「深く考えること」を排除する(参照:ゴーン被告報酬にサイン、日産・西川社長はなぜ「深く考えなかった」のか?)。「深く考えること」が排除されたところ、「議論」も問題視される。あらゆる前提を排除するゼロベース思考は、「もう1人の自分」から自己否定・現状否定される結果をもたらし得るため、事柄によってはタブーとなる。 今回は、その「議論」をめぐって考察したい。 「議論」のタブー化 「深く考える」ことと「議論」は双子である。深く考えても、議論しなければ、企業経営には何ら意味もなさない。 「納得できない」「合点がいかない」「腑に落ちない」……。日本語の表現は実に多様である。英語の「disagree」は、「私はあなたの意見に同意
今回は、久留米大学教授の塚崎公義が、公的年金の運用等々について考えます。公的年金を運用するGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)は、10〜12月期の運用実績が14.8兆円の赤字だったと発表しました。なんと、運用利回りがマイナス9%だったとのことですが、私たちの年金は大丈夫なのでしょうか。 問題の本質を正しく認識しよう 結論を先に言えば、大丈夫です。今回の発表は、3カ月間の運用の成績についてのものです。年金運用は長期間にわたって行われているもので、アベノミクスによる株高等々を反映して、運用開始以降で見れば問題なく利益が出ていますので、一喜一憂せず、安心しましょう。 「本稿は以上です」でも良いのですが、せっかくですから、本件に関連する事柄について、いろいろ考えてみましょう。「そもそも少子高齢化で年金は大丈夫なのか」「公的年金でリスク資産を持って大丈夫なのか」「GPIFが儲かった時も同じよう
気鋭の歴史学者として活躍し、当コーナーにも2度登場していただいた與那覇潤氏。しかし、2015年に双極性障害Ⅱ型(軽躁の状態とうつ状態を繰り返す病)で入院。後に、勤めていた大学を辞め、歴史学者を廃業するとも公表した。一時は著しい能力の低下により、本を読むことさえ困難になったが、回復後に出版したのが『知性は死なない 平成の鬱をこえて』 (文藝春秋)だ。病気を通じて世の中を見る目が変わったという與那覇氏が、平成の日本を席巻した反知性主義について語ってくれた。 ――世界的に見ても、平成の日本を見ても、反知性主義が跋扈していると度々指摘されます。平成日本の反知性主義について、どう捉えていますか? 與那覇:病気をする直前の2014年に、精神科医の斎藤環さんと対談させていただいたことがあります。当時はヤンキー文化論が流行っており、大雑把には「ヤンキーは身体感覚、つまり直感的な情動だけで動く人たちだから、
新潟県の沖合に浮かぶ佐渡島。その南部、佐渡海峡を挟み対岸に本州を望む場所に、赤泊(あかどまり)という、一見するとなんの変哲もない漁村がある。だがこの漁村は、水産資源保護という日本の漁業の未来を左右する課題において、注目の場所なのである。 夜が更けた午前1時半─―暗闇に包まれた赤泊漁港の中で、埠頭(ふとう)に横付けされた漁船の灯(あか)りだけが煌々(こうこう)と輝いていた。取材班が乗り込んだ「第五星丸」の乗組員は総勢7人。同船を保有する中川漁業の事業主であり、船長の中川定雄さん(77歳)が到着し、午前2時、船は港を離れ、漁場に向かった。 第五星丸の漁法は「エビ篭(かご)漁」だ。漁網の篭を海底に沈めて、篭の中に吊(つ)るされたエサ(サンマの切り身)の匂いに釣られて中に入った獲物を捕獲する。狙うはホッコクアカエビ(甘エビ)。その鮮やかな赤色から唐辛子(南蛮)にたとえて、現地では南蛮エビとも呼ばれ
お知らせ:本連載をまとめた書籍『外食もお酒もやめたくない人の「せめてこれだけ」食事術』(佐藤達夫 著)が2020年1月18日に発売されます(予約受付中!)。詳細はこちら 最も重要な栄養バランスはPFCバランス 今年の1月のこのコラム「お正月太り解消ダイエットのコツ」(http://wedge.ismedia.jp/articles/-/11507)で、「糖質を制限してもやせない」と書いたら、「そんなはずはない」というご意見や「くわしく知りたい」というご要望があったので、今回はこのことについて書いてみたい。 まずは「糖質」の説明から。 たくさんある栄養成分の中で、カロリーを持っている(私たちにエネルギーを供給できる)ものが4つある。 たんぱく質(Protein)と脂質(Fat)と炭水化物(Carbohydrate)、そして、同等に扱っていいかどうかは別にしてアルコールの4つ【※1】。 アルコ
農業のIT化が進む中、農協の業務の中でもやっかいな出荷物の配送予定の作成時間を大幅に短縮するシステムが登場した。1日8時間かかっていた作業がわずか1秒で済むという。導入するのは、神奈川県の三浦市農業協同組合(以下三浦市農協)とサイボウズ。独自のアルゴリズムを使って、人間が計算するよりも速く、かつ効率的な配車予定を組むことが可能になる。 時間かかるうえにトラック台数多く非効率 農協にとって出荷振り分け作業というのは、最も面倒な作業の一つ。翌日に農家から出荷される出荷物の量を把握し、市場などの配送先ごとの出荷数量と、荷物をどの運送会社のトラックにどう積み分けるかを決める。この作業は基本的に手作業で行われていて、三浦市農協の場合、まずは農家が各出荷所に翌日の出荷予定を連絡し、各出荷所が農協に連絡。農協は全出荷所から受け付けた数量をExcelへ入力し、北海道から大阪までの約50の市場への出荷数量を
ソニーは、4月1日付けで代表執行役社長兼CEOを、現在CFOを務める吉田副社長に交代する人事を発表した。平井社長は記者会見で、「コンシューマエレクトロニクス事業を、安定した収益を挙げられる事業構造に変革できたことは感慨深い」と語った。 2017年度の業績見通しの売上高が8兆5000億円、営業利益が前年比2.5倍の7200億円という数字は、確かにソニーという企業の復活を示すものだろうし、「規模を追わず、違いを追う」という方針で、コンシューマエレクトロニクス事業の事業構造を変革して黒字化した平井社長の努力は讃えられるべきなのかもしれない。しかし、次期社長に引き継がれる課題は大きい。 リーマンショックという誰も予測できなかった衝撃によって、世界的な景気の低迷や円高などが引き起こされた。ソニーは、すでにグローバルな競争力を失っていたパソコンやテレビなどのコンシューマエレクトロニクス事業(エレキ)の
最近、日韓関係におけるニュースの中に、新たに浮上しているキーワードがある。「天皇訪韓」という言葉だ。この言葉が飛び出したのは他でもない「韓国政府」からである。 昨年9月22日には李洛淵(イ・ナギョン)首相がマスコミとのインタビューで「退位される前に韓国へいらして、この間の両国がほどけなかったしがらみを解いてくだされば、両国関係の発展に大きな助けになる」と発言、その1カ月後の10月25日には李洙勲(イ・スフン)駐日韓国大使が「天皇が韓国を訪問すれば韓日関係を雪解けのように溶かすことに大きく寄与するだろう」と発言、続いて10月30日には康京和(カンギョンファ)外交部長官が念押しするかのように「天皇の訪韓が実現すれば両国関係の発展のための大きい契機になるであろうと評価している」と韓国側の強い「要望」を表明している。 韓国側から天皇訪韓を望む声が出たことは初めてではないが、首相、駐日大使、外交長官
「日本の経営者の本ですか? 中国でもたくさん出版されている稲盛和夫氏、孫正義氏などの本はもちろん、他にもネット上で中国語に翻訳されているものなど、いろいろ読んでいますよ。日本企業は中国より30年以上も先を歩んでいるので、私たちにとって勉強になることが多いのです」 中国・広州で知り合った40代の中小企業の経営者と話していたとき、日本語ができない彼らの口から次々と日本人のカリスマ経営者の名前が挙がった。稲盛和夫氏、孫正義氏のほか、永守重信氏(日本電産会長兼社長)、小山昇氏(武蔵野社長)、小倉昌男氏(大和運輸(現ヤマトホールディングス)元社長)……。それ以外にも私があまり知らない経営者の名前まで挙がり、日本人のこちらのほうが恐縮してしまうほどだ。 稲盛氏の人生哲学や経営哲学を学ぶ自主勉強会「盛和塾」は、日本国内にとどまらず、中国でも有名だが、それ以外にも、中国では前述した日本人経営者を尊敬してい
神奈川県大磯町の中学校の給食問題、皆さんはどのようにご覧になっていたでしょうか。2016年1月から事業者委託の弁当方式ではじめられた給食。異物混入が相次ぎ味も悪く残食が多いとして、今年9月に問題が表面化しました。 町によれば、16年1月からの異物混入は84件(毛髪39件、繊維14件、虫7件、ビニール片4件など)。毛髪が束になって入っていた、という苦情もあったとされています。しかし、工場内で入ったことが明確なのは毛髪3件、繊維2件、虫1件、ビニール片4件など計15件にとどまっています。 報道によれば、事業者は10月13日を最後に納品を中止し、町は別の事業者に弁当提供を要請していますが、3社に断られたとのことです。 断られるのは当たり前でしょう。事業者にしてみれば、弁当を提供し始めたときに、努力いかんにかかわらず、同じように苦情が多発するのが目に見えているからです。 食品に毛髪や虫等の異物が入
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