チリーン、チリーン-。心地よい澄んだ音色が町家に響く。兵庫県姫路市の「明珍(みょうちん)本舗」の火箸(ひばし)風鈴は、かすかな風でも4本の鉄火箸がふれ合い、涼をもたらす柔らかい音色を生み出す。 考案者で当主の明珍宗理(むねみち)さん(73)から技術を引き継ぐ三男の敬三さん(39)は、鉄より響きが広がるチタン製火箸風鈴の開発に挑戦している。納得できる品質にまでこぎつけ、来年から本格販売を始める予定だ。「時代にマッチした新製品を」。技術と明珍の名前を残すため、新たな時代を切り開く。 工房では、宗理さんと敬三さんが黙々と、真っ赤に染まった鉄の棒を鎚(つち)で打ち続ける。15~20センチほどの鉄の棒を加熱してはたたく、その繰り返し。すべてが手作業で、座って鉄を鍛錬(たんれん)する作業は重労働だ。 「体力的に非常にきつい仕事。これからは息子たちの時代」と宗理さん。18歳でこの世界に入り、一度は廃業の