冬の風物詩である「みかん」──いわゆる「温州みかん」は日本人にとって最もポピュラーな果物の一つだ。しかし、古くから親しまれてきたこのみかん、実は“謎の多い果物”でもある。いつ、どんな親品種を掛け合わせて作られたのか、他の柑橘(かんきつ)類とはどんな関係か、ほとんどの実で種がないのはなぜか……など、ハッキリしていないことは多い。今年、そんな謎に光を当てる研究成果が発表された。国立研究開発法人 農業・食品産業技術総合研究機構(農研機構)が、温州みかんの全ゲノム解読を実現したのだ。同時に、温州みかんを中心とした親子系統がゲノムレベルで再確認され、重要な遺伝子の働きも特定した。芽が出た段階で、DNAの情報から果実の特性を予測する見通しも立ってきた。柑橘類の新品種開発が一気にスピードアップする可能性がある。 静岡市清水区の興津にある農研機構 果樹茶業研究部門で育てられているみかん。敷地内には交配や育