芸に身をささげたレジェンドたちの生き様を描き続けるノンフィクションライターの田崎健太氏が、「いま、どうしても話が聞きたい」と会いに行ったのが、浪花のモーツアルトと呼ばれ、数多くの名曲を輩出してきたキダ・タロー氏だ。ほとんど記録に残されてこなかった氏の数奇な人生を振り返る――。 会いたくてたまらなくなった キダ・タローは不思議な存在である。 〝浪花のモーツアルト〟という人を食ったキャッチフレーズにより作曲家らしい、という認識はあるにしても、関西文化圏以外では、彼が何者であるのかを把握している人間は限られる。 それでも、ほとんどの人は彼が作曲した音楽を一度は耳にしたことがあるはずだ。 例えば――。 日清食品の〈あらよ、出前一丁♪〉、大阪のランドマークである『かに道楽』の〈獲れ、獲れ、ぴち、ぴち、かに料理♪〉、あるいはよみうりテレビの〈2時のワイドショー〉、朝日放送の〈プロポーズ大作戦〉のテーマ
