除夜の騒音 私は小学校卒業まで東京の下町に住んでいました。町工場が軒を連ねる中に父親の経営する会社がありました。小さなビルの1階が事務所と工場、2階と3階が私たち家族の住居となっていました。 通りを挟んで反対側には小さなお寺がありました。毎年大晦日の夜は、そのお寺が除夜の鐘を鳴らします。紅白歌合戦が終盤に差し掛かる頃、隣りから大きな鐘の音が鳴り始めます。それが年越しのお蕎麦を食べる合図でもありました。そんな大晦日の風景は、私にとってとても懐かしいものです。 その後、父の工場の拡張を機に、私たちは別の土地に住居を構えました。そこは文字通り閑静な住宅街で、大通りからも離れていたため、大晦日の夜はしんと静まり返っていました。引っ越し後の最初の大晦日。除夜の鐘の鳴らない年越しは、私にとってどことなく物足りない寂しい夜でした。今でも、テレビで除夜の鐘が映し出されると、子どもの頃の大晦日の夜を思い出し