はじめに ロシアによるウクライナ全面侵攻から3カ月弱が経過した現在、ウクライナ軍は首都キーウに迫るロシア軍を押し返したものの、東部ドンバス地方や南部では激しい戦いが続いている。陸・海・空・宇宙に次ぐ、第五の戦場「サイバー空間」や第六の戦場「認知空間」【注1】でも、ウクライナとロシアの戦いが繰り広げられている。ロシアの「情報安全保障」という枠組みの中で「サイバー空間」「認知空間」が峻別されているかどうかは別として、これまでのところ認知空間での戦いはウクライナや米欧が明らかに優位に立つ【注2】。 日本でも情報戦への関心が高まっている。防衛省が2022年4月1日、防衛政策局調査課に「グローバル戦略情報官」を新設し、偽情報や対外発信の戦略的意図を分析するという。 そこで本稿はウクライナ戦争をもとに、情報戦・認知戦で用いられる情報の一種である「ナラティブ」および「ナラティブ優勢(narrative