ブックマーク / morningrain.hatenablog.com (10)

  • トマ・ピケティ『資本とイデオロギー』 - 西東京日記 IN はてな

    書を「『21世紀の資』がベストセラーになったピケティが、現代の格差の問題とそれに対する処方箋を示した」という形で理解している人もいるかもしれません。 それは決して間違いではないのですが、書は、そのために人類社会で普遍的に見られる聖職者、貴族、平民の「三層社会」から説き始め、ヨーロッパだけではなく中国やインド、そしてイランやブラジルの歴史もとり上げるという壮大さで、参考文献とかも入れると1000ページを超えるボリュームになっています。 ここまでくるとなかなか通読することは難しいわけですが(自分も通勤時に持ち運べないので自宅のみで読んで3ヶ月近くかかった)、それでも読み通す価値のある1冊です。 書で打ち出された有名な概念に「バラモン左翼」という、左派政党を支持し、そこに影響を与えている高学歴者を指し示すものがあるのですが、なぜそれが「バラモン」なのか? そして、書のタイトルに「イデ

    トマ・ピケティ『資本とイデオロギー』 - 西東京日記 IN はてな
    toraba
    toraba 2023/12/27
    バラモン左翼と商人右翼の共通点「どちらとも既存の経済的な仕組みとグローバル化に強くこだわっている。それは基本的には知的エリートと金融エリートの双方の利益にかなうものだからだ。」https://youtu.be/helG4ohheTM?t=2417
  • 東島雅昌『民主主義を装う権威主義』 - 西東京日記 IN はてな

    「民主主義」の反対となる政治体制というと「独裁」が思い浮かびますが、近年の世界では金正恩の北朝鮮のようなわかりやすい「独裁」は少なくなっています。 多くの国で選挙が行われており、一応、政権交代の可能性があるかのように思えますが、実際は政権交代の可能性はほぼ潰されているような体制の国がけっこうあります。 独裁からこういった選挙があるけど政権交代の可能性がほぼない国までひっくるめて政治学では「権威主義」、「権威主義体制」と言い、近年では今井真士『権威主義体制と政治制度』、エリカ・フランツ『権威主義』のように権威主義を分析したや、川中豪『競争と秩序』のように民主主義と権威主義の狭間で動くような国(東南アジアの国々)を分析したも出ています。 こうした中で書は権威主義体制の戦略、特に権威主義体制における選挙の利用について分析したになります。 権威主義体制に選挙は必要ないような気もしますが、先

    東島雅昌『民主主義を装う権威主義』 - 西東京日記 IN はてな
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    toraba 2023/06/04
    政権交代時の旧・2ちゃんねるニュース速報+の反応『【政治】民主党、300議席超の見通し - NHK』https://tsushima.5ch.net/test/read.cgi/newsplus/1251632431/
  • 玉手慎太郎『公衆衛生の倫理学』 - 西東京日記 IN はてな

    新型コロナウイルスの感染拡大の中で、まさに書のタイトルとなっている「公衆衛生の倫理学」が問われました。外出禁止やマスクの着用強制は正当化できるのか? 感染対策のためにどこまでプライバシーを把握・公開していいのか? など、さまざまな問題が浮上しました。 そういった意味で書はまさにホットなトピックを扱っているわけですが、書の特徴は、この問題に対して、思想系のだと必ずとり上げるであろうフーコーの「生権力」の概念を使わずに(最後に使わなかった理由も書いてある)、経済学政治哲学よりの立場からアプローチしている点です。 そのため、何か大きなキーワードを持ち出すのではなく、個別の問題について具体的に検討しながらそこに潜む倫理的な問題を取り出すという形で議論が展開しています。 そして、その議論の過程が明解でわかりやすいのが書の良い点になります。 「これが答えだ!」的な話はありませんが、問題点が

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    toraba 2023/02/10
  • 黒川みどり『被差別部落認識の歴史』 - 西東京日記 IN はてな

    中学で公民を教えるときに、教えにくい部分の1つが被差別部落の問題です。 問題を一通り教えた後、だいたい生徒から「なんで差別されているの?」という疑問が出てくるのですが、歴史的な経緯を説明できても、現代でも差別が続いている理由をうまく説明することはできないわけです。 もちろん、地域によっては子どもであって差別を身近に感じることもあるかもしれませんが、東京の新興住宅街などに住んでいると、差別が行われている理由というものがわからないのです。 書はそのような疑問に答えてくれるです。 書の「はじめに」の部分に、結婚において差別を受けた部落出身の女性が、差別する理由を重ねて尋ねると、相手の母親が「すみません、なんで今でも差別があるんでしょうか?」と、差別をしているにもかかわらず、その理由を差別している相手(女性の母親)に訊くというエピソードが紹介されているのですが、差別している人が差別している

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    toraba 2021/08/14
    「部落の問題に理解を持っている人でも、部落は血族結婚を重ねているので遺伝上問題があるといった考えをもっていることがありました」
  • ブランコ・ミラノヴィッチ『資本主義だけ残った』 - 西東京日記 IN はてな

    世界の不平等について論じた『不平等について』や、「エレファント・カーブ」を示して先進国の中間層の没落を示した『大不平等』などの著作で知られる経済学者による資主義論。 現在の世界を「リベラル能力資主義」(アメリカ)と「政治的資主義」(中国)の2つの資主義の争いと見た上で、その問題点と今後について論じ、さらに「資主義だけ残った」世界の今後について考察しています。 著者のミラノヴィッチはユーゴスラビア出身なのですが(ベオグラード大学の卒業で、アメリカ国籍を取得)、そのせいもあって社会主義とそこから発展した中国政治的資主義の分析は冴えており、「社会主義が資主義を準備した」という、挑戦的なテーゼを掲げています。 アセモグル&ロビンソンは『国家はなぜ衰退するのか』や『自由の命運』の中で、中国の発展はあくまでも一時的なものであり、民主化や法の支配の確立がなされないかぎり行き詰まると見てい

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    toraba 2021/07/30
  • 上林陽治『非正規公務員のリアル』 - 西東京日記 IN はてな

    ある制度が良いのか悪いのかというのはなかなか難しく、簡単には判断を下せないケースが多いのです。例えば、選挙制度は小選挙区制がいいのか比例代表制がいいのか、日型の雇用制度が良いのか悪いのか、といったことは一概には判断を下せないと思っています。 そんな中でも、個人的に明確に「悪い制度だ」と考えているのが、外国人の技能実習制度と、書のテーマである非正規公務員の問題を含む地方公務員の人事をめぐる制度で、特に後者は新卒に重い価値を日の就職市場のあり方や、男女の格差の問題の解決にもつながっていく非常に重要な問題だと思っています。 書は、そんな非正規公務員の問題を扱ったであり、2012年に出版された同じ著者による『非正規公務員』の問題意識を受け継ぐです(未読ですが2015年に『非正規公務員の現在』というが出版されている)。 非正規公務員の低待遇と不安定な身分を告発するとともに、この問題を改

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    toraba 2021/04/11
    『市民を雇わない国家』https://youtu.be/5wCiJU0BGyI?t=1497
  • 小熊英二、樋口直人編『日本は「右傾化」したのか』 - 西東京日記 IN はてな

    ここ最近話題になっている「右傾化」の問題。「誰が右傾化しているのか?」「当に右傾化しているのか?」など、さまざまな疑問も浮かびますが、書はそういった疑問にさまざまな角度からアプローチしています。 実は、国民意識に関しては特に「右傾化」という現象は見られないが、自民党は以前より「右傾化」しているというのが、書の1つの指摘でもあるのですが、そのためか、執筆者に菅原琢、中北浩爾、砂原庸介といった政治学者を多く迎えているのが書の特徴で、編者は2人とも社会学者であるものの、社会学からの視点にとどまらない立体的な内容になっていると思います。 目次は以下の通り。 総 説 「右傾化」ではなく「左が欠けた分極化」  小熊英二 第I部 意 識 1 世論 世論は「右傾化」したのか  松谷満 2 歴史的変遷 「保守化」の昭和史――政治状況の責任を負わされる有権者  菅原琢 第Ⅱ部 メディア・組織・思想 1

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    toraba
    toraba 2020/12/06
    「農村出身の議員は右傾化しておらず、都市部出身の議員が右傾化する傾向もあります」
  • ピーター・テミン『なぜ中間層は没落したのか』 - 西東京日記 IN はてな

    著者は著名な経済史家で、経済学の立場としてはケインジアンだといいます。そんな著者が「なぜ中間層は没落したのか」というタイトルのを書いたというと、近年の経済の動きと格差の拡大を実証的に分析したを想像しますが、書はかなり強い主張を持った論争的なです。 現在、アメリカの社会は左右に分極化していると言われますが、著者は上下の分極化を指摘しています。アメリカの社会は上20%(書はFTE部門(FTEは金融(Finance)、技術Technology)、電子工学(Electronics)の頭文字)と呼んでいる)と下80%に分極化し、共和党はもちろん、民主党も基的には上20%の代表になっているというのです。 そして、現在のアメリカはアーサー・ルイスが途上国の経済を分析するときに使った二重経済のモデルで説明できるというのが書の主張になります。 少し陰謀論的な印象を受けるところもありますが、7

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    toraba 2020/09/26
    「アメリカ政治は分極化していると言われていますが、大金持ちの影響を強く受けているという点では民主党も共和党も変わらないのです」https://youtu.be/23238vRnceE?t=724
  • 木下衆『家族はなぜ介護してしまうのか』 - 西東京日記 IN はてな

    「家族はなぜ介護してしまうのか」、なんとも興味をそそるタイトルですが、書は、認知症患者のケアにおける家族の特権的な立場と、それゆえに介護専門職というプロがいながら、家族が介護の中心にならざるを得ない状況を社会学者が解き明かしたになります。 書は専門書であり、イアン・ハッキングや「概念分析」の考えを援用しながら認知症と介護について分析したりもしています。ただし、多くは分析は当事者の実際の声を拾いながら行われており、社会学の難しい概念がわからなくても介護経験者などには「わかる」部分が多いのではないかと思います。介護問題が身近になくても、対人援助職についている人などは「わかる」と感じる部分が多いのではないでしょうか。 また章と章の間にはコラムも挟まれており、実際に介護問題に直面している人はそこから読んでみてもいいかもしれません。 目次は以下の通り。 はじめに 序章 新しい介護、新しい問題

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    toraba 2020/03/13
  •  なぜ「ポピュリズム」と「新自由主義」は仲が良いのか? - 西東京日記 IN はてな

    トランプ大統領の誕生など、いわゆる「ポピュリズム」が注目を浴びています。この「ポピュリズム」の定義というのはなかなか難しいもので、政治学者の間でもその捉え方には違いがある状況ですが、多くの分析において「ポピュリズム」の隆盛の原因として広がる格差の問題があげられています。 ただ、格差の拡大によって剥奪感を感じた人々が現状の政治に不満を持つという回路は分かりやすいのですが、そうした人びとがトランプのような人物を支持するという点には謎が残ります。 格差の拡大によって貧しくなった人びとが、サンダースや急進的な再分配を訴える左翼的なポピュリズム政党を支持するというのはわかりやすいですが、「雇用」を連呼しているとはいえ、規制緩和と富裕層への減税を主張するトランプを支持することにはわかりにくさが残るのです。 つまり、「新自由主義」は市場における競争を重視する考えで「弱肉強」的な世界をつくりだすと考えら

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    toraba 2017/09/02
    中間団体
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