子供をめぐる殺人事件の報道で「命の大切さを・・・」を云々する人が依然として多い。 しかしこれが間違いであることは、皆はもうわかっているはずである。このことは、かつてオウム事件でわれわれは既に学習したはずではなかっただろうか。サリンの実行犯は「命の大切さ」をこれ以上ないくらい真面目に考えていた医者だったという深刻な事実を、どうして誰も忘却してしまったのだろうか。長崎で同級生を殺したという事件や、マンションから子供を突き落としたという事件の犯人も、真摯に「命の大切さ」を語っていたことがわかっている。最近も少年が自分の家族を放火で殺すという事件が起きたが、これも医者の息子だったというのが示唆的である。 むしろ常識的に言っても、「命を大切に」という観念が強まると、「命」を脅かすと思われるような相手に対する寛容さがなくなり、「そういう奴は殺しちまえ!」という感情が正当化されやすい。またある者が社会へ