名古屋の出版文化を半世紀あまり先導してきた出版社「風媒(ふうばい)社」に、2020年度の名古屋市芸術賞・芸術奨励賞が贈られた。創業者の稲垣喜代志さん(故人)が1963年に同市中区に設立。名古屋からさまざまな課題を全国に向けて問い続けてきた。文芸分野で出版社が同賞を受賞するのは初めて。2代目編集長として遺志を継ぐ劉永昇(りゅうえいしょう)さん(58)は、「社会的弱者に本で寄り添うことが使命」と気を引き締める。【山田泰生】 風媒社によると、総発行点数は、国会図書館の収蔵本を中心に計約1800冊。出版不況の続くなか、社会科学やノンフィクション、文学など各ジャンルの新刊本を月平均3冊発行し続ける。