■母親殺しの物語 村上春樹『スプートニクの恋人』 ※本ブログでは記事中に広告情報を含みます この小説は、すみれによる「母親殺しの物語」である(と私は解釈した)。 物語中では、すみれの母親はすでに亡くなっている。では、どうしたら、すみれの「母親殺し」は可能となるのか。それは、こちら側(地球=現世)からあちら側(スプートニク=あの世)の世界に行けばいいのだ。その際、必要となるのがロケット、ミュウ(ミューロケット)だ。性的な欲望のカタチをとってすみれとミュウはギリシャの島で同一となり、彼女らはあちら側の世界に行ってしまう。そして、ミュウはすみれの母親の分身としての役割も担うことになる。 実際にはすみれは、始めと終わりのある作品をひとつ として完成させることができなかった。(講談社文庫、21項) すみれがスプートニクに乗ったままでは、スプートニクは地球の周りを回り続けて物語は終わらない(始まりも終