「高齢者の交通事故の抑制に向けて、スピード感を持って対策を講じる必要がある。後付けの踏み間違い防止装置の普及が重要で、対応可能な車種を拡大してもらいたい」 2019年7月5日午後、国土交通省の会議室に国内大手自動車メーカー8社の幹部が並んでいた。彼らを前に国交省の工藤彰三政務官(当時)は、アクセルペダルとブレーキペダルの踏み間違いによる急発進を抑制する後付けシステムの開発を強く要請した。 自動車メーカーの反応は早かった。20年9月2日に日産自動車が「後付け踏み間違い加速抑制アシスト」を発売したことで、大手8社すべてが既販車向けの後付け安全装置を販売できる体制が整った(図1)。一般に自動車技術の開発には数年の時間が必要とされる中で、わずか1年2カ月という期間での対応は異例の早さといえる。
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