ひとつの注釈について考えてみたい。舞台はスノックソール、p67の脚注ナンバー12である。そこに「言及されているのは、ワーナー・ブラザーズのトップスターの一人であるモーガンが、極東戦線で日本軍戦闘機を相手に活躍するGod Is My Co-Pilot(1945)」とある。 実は、当該の映画は『空軍極秘作戦』のタイトルで2012年にブロードウェイからDVDが発売されている。『重力の虹』の翻訳出版が2014年なので、これはリサーチ不足といえるだろう。 しかし訳者のリサーチ不足をいちいちあげつらいたいわけではない。わたしが気になるのは、この映画の監督がロバート・フローリーだからなのだ。 ロバート・フローリー。この名前は蓮實重彦の『ハリウッド映画史講義: 翳りの歴史のために』にも記されている。そこではフローリーこそ『フランケンシュタイン』(1931)をユニバーサル社に映画化することを提案し脚本執筆も