ディスカバリー・チャンネル、ナショナルジオグラフィック・チャンネルなど、海外のドキュメンタリー好きなら、オオカミの群れと一緒に暮らすこの男のこと知っているかも知れない。日本のテレビでも何度も取り上げられているので、彼の顔に見覚えのある人も多いだろう。 オオカミの群れとともに暮らし、服を何ヵ月も着替えず、羊の死体から直接生肉をむさぼり食い、唸り、遠吠えをする。彼が動物の内臓を食いちぎってオオカミを威嚇しつつ唸っている映像を見たとき、いくらオオカミに魅せられているとはいえ、なぜここまでやるのか、と衝撃を受けたものだ。 その男、ショーン・エリスが、自らオオカミへの思いやオオカミとの生活について語った本がついに出た。そして「なぜそこまでやるのか」が少しだけわかったような気がした。 エリスは父親の顔を知らない。イングランドのノーフォーク州の農場で生まれ、貧しい農夫である祖父母によって育てられた。母親