江夏名枝『海は近い』(5)(思潮社、2011年08月31日発行) 江夏名枝『海は近い』の感想は、もっと効率的(?)な書き方があるかもしれない。けれど、詩は、もともと「効率」とは無関係なものだから、効率的に書いてもしようがないかもしれない。 でも、少しずつ、書き方を変えてみるか……。 「5」の部分。 白髪を短く刈り込んだ小柄な男がひしゃくで水を撒く。眠りのなかにあるような規則的なしぐさ、だからいま、わたしは目覚めているのだとわかる。 「白髪を短く刈り込んだ小柄な男がひしゃくで水を撒く。」は簡潔な描写に見えるが、ここにも「複製」の問題が隠されている。 白髪を「短く」刈り込んだ男は「小柄」と「複製」される。「大柄」だと「複製」ではなく、別なストーリーになってしまう。「想定外」になってしまう。それはそれでいいのだが、江夏は、こういう部分では「逸脱」しない。ことばの「軸」をぶらさない。ぶらさないこと