生物の最大の特徴は多様性といえる。それぞれの個体によって、生理反応や、介入に対する反応も異なる。医学においても、各個人の予後、治療への反応は異なり、再現性は必ずしも認められない。しかしながら、医療行為を行うときには、その効果を予想して何かしらの判断をする必要がある。最良の治療方法を選択するためにあらゆる知識が動員される。従来の判断根拠は、生理学の知識と医療者の経験であった。医学の父と称される古代ギリシャのヒポクラテスの誓いのなかには、「書きものや講義その他あらゆる方法で私の持つ医術の知識をわが息子、わが師の息子、また医の規則にもとづき約束と誓いで結ばれている弟子どもに分かち与え、それ以外の誰にも与えない。」(小川鼎三訳)と記載されている。 しかし、その後の医学の科学的な発展のおかげで、知見、技術は莫大な量となった。各医療者がすべてを経験、把握し実践することはもはや不可能である。そこで、あら