今月1日に日本学術会議から「子どもの放射線被ばくの影響と今後の課題」という報告書が発表された。日本学術会議は我が国の人文・社会科学から理学・工学までの全分野の代表者からなる、いわば「学者の国会」。政府に対する政策提言から世論啓発までを役割としている。 報告書が対象としている東京電力福島第1原発事故については、既に多くの論文や調査結果などが蓄積されている。国連科学委員会の報告でも、放射能由来の公衆の健康リスクについて「今後もがんが自然発生率と識別可能なレベルで増加することは考えられない」と結論が出ている。 学術会議の報告でも、被ばく量はチェルノブイリ原発事故よりはるかに小さいという評価が改めて示されているが、特に不安の多い子どもへの影響に焦点を絞っている点が重要だ。「福島第1原発事故による胎児への影響はない」としており「上記のような実証的結果を得て、科学的には決着がついたと認識されている」と
遺伝の法則の「優性」「劣性」は使いません――。誤解や偏見につながりかねなかったり、分かりにくかったりする用語を、日本遺伝学会が改訂した。用語集としてまとめ、今月中旬、一般向けに発売する。 メンデルの遺伝学の訳語として使われてきた「優性」「劣性」は、遺伝子の特徴の現れやすさを示すにすぎないが、優れている、劣っているという語感があり、誤解されやすい。「劣性遺伝病」と診断された人はマイナスイメージを抱き、不安になりがちだ。日本人類遺伝学会とも協議して見直しを進め、「優性」は「顕性」、「劣性」は「潜性」と言い換える。 他にも、「バリエーション」の訳語の一つだった「変異」は「多様性」に。遺伝情報の多様性が一人一人違う特徴となるという基本的な考え方が伝わるようにする。色の見え方は人によって多様だという認識から「色覚異常」や「色盲」は「色覚多様性」とした。 学会長の小林武彦東京大教授は「改訂した用語の普
エタノールは体内で代謝されることによって、アセトアルデヒド→酢酸へと 変化していきますが、同様にメタノールは体内でホルムアルデヒド→蟻酸へ 変化します。 この時生成されるホルムアルデヒド・蟻酸は人体にとっては猛毒となりますので、 メタノールを誤飲すると最悪死亡することもあるわけです。 死ななかったとしても、ご質問の通り失明する可能性は極めて高いのですが、 その理由としてアルコール脱水酵素(メタノールをホルムアルデヒドにする)が 肝臓に次いで眼球の網膜に多く存在することが原因です。 では何故、眼球にアルコール脱水酵素が多いのか? 若干余談ではありますが、簡単に視覚のメカニズムについても説明します。 網膜では外界からの光を感知し、それを脳に伝えて映像化するための処理が 行われていますが、この処理は全て化学反応で成り立っています。 その反応は緑黄色野菜の栄養素として有名なβ-カロテン、これを 真
カレーの香辛料ターメリックとしても知られる「ウコン」の成分を利用し、がんの進行を大きく抑えることにマウスの実験で成功したとする研究結果を、京都大のチームがまとめた。 抗がん作用は以前から知られていたが、効果を強める方法を開発したという。新たながん治療薬の開発が期待される成果で、神戸市で開かれる日本臨床腫瘍学会で27日発表する。 この成分は「クルクミン」と呼ばれ、大腸がんや 膵臓 ( すいぞう ) がんの患者に服用してもらう臨床試験が国内外で行われている。ただ、有効成分の大半が排せつされるため血液中の濃度が高まらず、効果があまり出ないという課題があった。 チームの掛谷秀昭教授(天然物化学)らは、排せつされにくく、体内で有効成分に変わるクルクミンの化合物を合成。有効成分の血中濃度を従来の約1000倍に高めることに成功した。人の大腸がんを移植したマウス8匹に注射したところ、3週間後の腫瘍の大きさ
芸能人やメディアのみなさんにお願いがあります。ブログやSNS、ネット記事等で、がん検診を安易に勧めないでください。無条件にいいことだと思われていますが、がん検診にはデメリット(害)もあります。よかれと思ってしたことで、かえって多くの人に害を与えてしまうことになるかもしれないのです。 ここ数年、がんにかかったことを公表する芸能人が相次いでいます。昨年6月9日、歌舞伎俳優の市川海老蔵さんが記者会見を開き、妻でフリーアナウンサーの小林麻央さん(34)が「進行性の乳がん」であることを公表し、大きな衝撃を与えました。この2月18日(土)にも、女優の藤山直美さん(58)に初期の乳がんが見つかったと報道されました。藤山さんは10年前から乳がん検診を受けており、今年1月の検診で要再検査となったそうです。 医療機関に乳がん検診を希望する若い女性が殺到
偽ニュースサイトが英語圏で蔓延しているとか、インチキまとめサイトとかが話題ですが、偽情報は日本のニュースメディアでも広がっているようです。Gigazineが報じた、記事『健康食品「ウコン」(ターメリック)には薬効はないことが判明』はその典型で、元の論文の趣旨とは全く逆であることがわかりました。 問題を指摘したのは、B2Bマーケティングハッカーとして大注目の元GEヘルスケア飯室 淳史氏です。飯室氏は薬剤師資格を持たれている医薬品論文にも慣れた方です。 飯室氏の説明を3つのポイントでまとめてみました。 論文の調査対象は ウコンでなくその主成分たるクルクミンであって、対象をすり替えている 主成分のクルクミンの薬効を統計的に見ると否定するという見解ではあるけど、この手の論文は膨大にあって、薬効が見えないという論文一つで「判明」なんてしない。 そして、論文自体が 「もちろん、天然ウコンの抽出物が、人
『健康食品』と聞いて何を思い浮かべますか? なんとかゲン、なんとか油、なんとか汁… うさんくせーのが一杯ありますよね! 健康食品にも様々な種類があります。 企業や研究機関がin vitroや1動物実験、ヒト試験で効果を実証し、政府に認められた食品は保険機能食品と言います。 【過去記事】10分でわかる保健機能食品の基礎【特定保健用食品(トクホ)、機能性表示食品、栄養機能食品】 黒ウーロン茶や各種ヨーグルトなどのパッケージにも表示されている『特定保健用食品(トクホ)』も保険機能食品の一種です。 対して、効果があるのかわからない健康食品も数知れず… ”科学的根拠”を示せば、簡単に”機能性表示食品”は表示できるようになったんですけどねぇ… 保険機能食品のトピックは以前書きましたので、今回は『よくわからない健康食品』の代表格とも言える『酵素ドリンク(飲む酵素)』『酵素ダイエット』を例に、健康食品業界
米国ワシントン州に住む男性が、生まれた我が子の遺伝子検査をしたところ、生物学的には本人の子供ではなく、兄弟の子供であることが分かったという。 精子は確かに本人のもの この34才の男性は、妻とともに不妊治療を受けており、生まれた子供は人工授精によるもの。 担当医は人工授精に使用した精子が夫本人のものであることを確認している。それにもかかわらず、生まれた子供の血液型が両親のどちらとも一致しなかったため、夫妻は遺伝子検査を依頼した。 遺伝子は兄弟のもの 医師が夫の唾液から採取した遺伝子を調べると、子供のものとまったく違っていた。つまり、100%夫の子供ではない。 ところが、夫の精子を調べると、10%という半端な割合が子供の遺伝子と一致した。これは、遺伝学的には、夫の兄弟が本当の父親であると考えられる。 だが、さらに不可解なことに、当の夫に兄弟はいないのだ。 兄弟は夫の体内に吸収された双子の一方
愛知県の女性(30)が、高校時代にがん治療で生殖機能を失う前に卵子を凍結保存し、12年後、受精卵にして子宮に戻し、今年8月に出産していたことが分かった。 卵子を10年以上凍結保存して出産に至ったケースは珍しいという。 女性の卵子凍結に関わった桑山正成リプロサポートメディカルリサーチセンター(東京都新宿区)所長によると、女性は高校1年時に血液がんの悪性リンパ腫を発症。抗がん剤治療で不妊になる恐れがあった。そのため高校2年になった2001年に不妊治療施設「加藤レディスクリニック」(同区)で卵子を2個採取し、凍結保存した。悪性リンパ腫は抗がん剤治療などで克服した。 女性は昨年結婚し、解凍した卵子2個と夫の精子で体外受精を行った。子宮に戻した受精卵1個で妊娠することができ、今年8月、3295グラムの男児を出産した。
血液型には、日本で広く知られる「A」「B」「O」「AB」の4種類で分類するABO式血液型やRh因子で分類するRh式血液型など、さまざまな分類方法が存在します。その中には、何百種類も存在する血液型の中でも世界的に非常に貴重な、1万人に1人未満の割合でしか存在しない幻の血液型、通称「黄金の血」が存在します。 The man with the golden blood | Mosaic http://mosaicscience.com/story/man-golden-blood Take a Tour of Britain's Eerily Beautiful 'Golden Blood' Factory - ABC News http://abcnews.go.com/Health/tour-britains-eerily-beautiful-golden-blood-factory/sto
インフルエンザ予防接種に対して否定的な考えをもつ方々がよく引用する文献に「前橋レポート」と呼ばれる調査があります。このレポートは、1979年に群馬県の前橋市医師会が、インフルエンザの副作用と効果に不信感を持ち、接種を取りやめ、5年間に渡る研究結果をまとめたものです。その後90年前半にインフルエンザ予防接種の集団接種が廃止されるきっかけになったと言われています。 予防接種に否定的な考えをもつ方々の主張は、「前橋レポートで予防接種の有効性は否定されている」という短絡的なものですが、一体その中身はどのようなものでしょうか?前橋レポートで予防接種の有効性は本当に否定されているのでしょうか。内容を検討してみました。 なお、記事の構成は次のとおり。 前橋レポートの中身(予防接種は効かないのウソ)(こちらの記事から読むことをオススメします) 前橋レポートの中身(接種の有無による罹患率の差)(このページ)
本ブログでは医療・医学に関するデマを取り扱っています。以下のようなものです。 「受動喫煙は悪」はでっちあげ? 「子宮頸がんワクチンで不妊」はやっぱりデマ 「風疹ワクチンを打つ必要がない理由」の誤解 「HPVワクチン(子宮頸がんワクチン)の嘘」の検証をわかりやすく これらの記事で取り上げている話題は、専門家の間で論争になるようなことではありません。むしろ、「は?なにそれww」と一笑に付されるようなものでしょう*1。しかし、ネット上やテレビ、雑誌などのメディアで、あたかも「賛否両論」であるかのように取り上げられることがあります。それによって、専門家から見れば突拍子もないような「幻の争点」が、社会的(時には政治的)に力を持つことになります。 英語には、こういった現象を表す言葉があります。 「Manufactured controversy 」 省略して、「Manufactroversy」 "Ma
コーセーは15日、iPS細胞(人工多能性幹細胞)を使い、67歳の日本人男性の肌の細胞を、同じ人の36歳時点の肌とほぼ同じ状態に若返らせることに成功したと発表した。同じ人から1980年以降、定期的に提供を受けていた、36~67歳の五つの異なる年齢の肌の細胞を、京大のiPS細胞研究所でiPS細胞にした。同社が分析したところ、老化の指標となる染色体の状態は五つのすべての年代で回復し、67歳時点のものも36歳時点とほぼ同じ状態になった。 同社は今回の結果を使い、老化のメカニズムを解明していく。まだ基礎研究の段階だが、将来的には、一人ひとりの肌アレルギーに対応したオーダーメード化粧品の開発にもつながるという。
西アフリカ、特にシエラレオネで起きているエボラ出血熱のアウトブレイクがなかなか終息せず、世の中がざわざわしていますね。感染が拡大してしまった大きな要因として、都市での発生と言う地理的要因の他、現地の人たちの教育水準や文化的背景、そして政治体制の問題があるのは疑いようもなく、アウトブレイクの終息にはまだまだ時間がかかりそうです。 国際的な注目が集るきっかけとなった一つの出来事に、アメリカ人の感染者が本国にチャーター機で輸送され、病院に収容されたというものがありました。治療に使われているという未承認薬も含めた一連のアメリカの動きは政治力学の発露であることは否めず、諸手を挙げて「アメリカすげぇ」とは言えない状況ですが、どさくさ紛れのごり押しで研究開発が進むのも事実であります。清濁併呑して突き進むアメリカのパワーを思い知らされます。 さて、当ブログは論文紹介ブログですので、アウトブレイクのニュース
「お腹を痛めて産んだ子なのに、DNAが一致しない!」あやうく子供を取り上げられかけ、さらに犯罪の疑いまでかけられてしまった女性 自分のお腹を痛めて産んだ子供であれば、現代はDNA鑑定によって血縁関係を証明できるようになりました。 ところがアメリカで、実際に自分が出産したにもかかわらずDNAが一致せず、子供を取り上げられかけ、さらには犯罪の疑いまでかけられてしまった女性がいます。 いったいどんなケースなのでしょうか。 She's Her Own Twin - ABC News その女性はリディア・フェアチャイルドさんと言います。3児の母親である彼女は、わが子であることを証明するために裁判で争う羽目になりました。 問題が起きたのは2002年で、リディアさんが25歳のとき。4歳と3歳の2人の子供に加え、お腹の中には妊娠3か月の子を身ごもっていました。 子供たちの父親にあたるパートナーとは別れてお
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