人の役に立つべきいのちが、目の前で消えていく。宮崎県の畜産農家の苦悩は深い。四十九頭の種牛は、なぜ殺処分されるのか。もっとよく説明してほしい。もう二度と繰り返されないように。 「あの子たちがかわいそうで…」。殺処分の進行を見守るしかない畜産農家の悲痛な声だ。「あの子」という言葉遣いに、手塩にかけた牛や豚への思いがこもる。 口蹄疫(こうていえき)は、感染の速さが特徴だ。ウイルスの増殖を抑え、被害の拡大を防ぐには、増殖原の病獣を速やかに処分するしかない。理屈はわかる。だが、わかっていても、生産者の目に浮かぶ涙を見ると、心が痛む。