経過 患者は、関西在住の40代女性です。平成20年頃から咳や労作時呼吸困難があり、特発性間質性肺炎(原因不明で肺の線維化が進む病気)と診断されました。平成25年暮れから呼吸状態が急速に悪化し、肺移植以外に救命方法はないと判断されました。大量の酸素吸入が必要で、ほとんどの時間をベッド上で過ごすようになり、脳死肺移植には間に合わないと考えられる状態でした。 ご本人およびご家族の希望から生体肺移植の実施を検討し、医学的理由から肺が提供可能であったのは、ご家族の中でご主人だけでした。 術式の選択過程 通常の生体肺移植では、二人のドナー(肺の提供者)のそれぞれの右または左下葉(肺の下の部分)をレシピエント(患者)の右肺および左肺として両側生体肺移植を行います。体格が小さい小児がレシピエントの場合にはドナー一人の下葉をレシピエントの同側の片肺として移植するケースがしばしばありますが、レシピエントが大人