<この国はどこへ行こうとしているのか> ◇合理性よりも「生命」を--石牟礼道子さん(84) 「台風、とても変な動きをしましたねえ。大丈夫でしたか」。ゆっくりとした、柔らかい声。作家、石牟礼道子さんは、東京から来た記者をそうねぎらってくれた。 熊本市の住宅街、内科医院の4階。暴風一過の空気はきりりと冷たく、乾いていた。 水俣病に侵された人々の苦しみを克明に描いた「苦海浄土」出版から42年。現在は難病のパーキンソン病を患い、療養生活を送る。「ペンを持って書くのは重労働。速度が10倍も遅くなりました」 そんな石牟礼さんは九州の地から、東日本大震災をどう見ているのか。 「こんな句を詠んだんです」と、記者のノートにボールペンで書いてくれた。ペンを握る手が震え、文字も波立っている。2分以上かけて、書き上げた。 毒死列島身もだえしつつ野辺の花 「毒死」という言葉に、はっとさせられた。石牟礼さんの温和な表