公立図書館での迷惑行為を理由とした入館禁止処分の適法性 前国立国会図書館総務部総務課・高木俊明(たかぎとしあき) 本件は,公立図書館において迷惑行為をしたとされる利用者と当該図書館を設置した地方公共団体との間における紛争であり,図書館関係者の間でも注目を集めたようである。2022年1月に,名古屋高裁が本件について第一審判決(以下「原判決」)とは異なる判断をした(以下「本判決」)ことも踏まえ,本判決について概観したい。なお,本稿中の意見は筆者個人のものである。 ●事案の概要 Y市(一審被告・控訴人)の住民であるX(一審原告・被控訴人)は,Y市が設置する図書館(以下「本件図書館」)において,図書の過剰な借出し等の問題行動を繰り返したとして,Y市図書館運営規則(以下「本件規則」)6条に基づき,本件図書館の利用及び入館を禁止する処分(以下「本件処分」)を受けた。Y市図書館設置条例(以下「本件条例」