日本人が日常的に使っているものの中には、外国人をとりこにするような素晴しいものがたくさんある。和包丁もそのひとつかもしれない。私が所有している唯一の和庖丁は、私にとっての相続財産みたいなものだ。その和包丁は7年前、当時22歳だった私が鹿児島で外国語の教師をしていたときに、隣町に住んでいた外国語教師からお別れの品としてもらったものだ。 引っ越しの手伝いに行ったら、その人は少し照れながら台所の流し台の下の戸棚から黒檀色に磨かれた木の柄のひどく錆び付いた和包丁を取り出して、それをくれたのだ。彼女よりも手入れをしっかりするという条件と共に、私は人生初めての和庖丁を承継した。 見た目からして美しい あのときからこの1本の庖丁には、さまざまな面でとても世話になっている。料理好きの私が台所で使うだけにとどまらず、以前から日本の伝統工芸に引かれて日本語を学んでいた私にとって非常に大きな刺激となり、 人生を
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