通算1000時間の研究会を通じて 〈将棋を指しませんか――〉 羽生さんが電話をかけてきたのは、将棋の研究会の提案だった。私はノータイムで「ありがとうございます。お願いします」と答え、その月から(2人で対局する)「VS」方式の研究会がスタートした。 研究会での羽生さんは、いつも謙虚で自然体だ。大雪で時間に遅れたとき、羽生さんは雪のなかを激走して息を切らしながら、待ち合わせの場所に「すいません」と駆け込んできたこともある。記念すべき第1回の研究会では、ガチガチに緊張してしまった私を見て、感想戦の最中に「そっか、これは確かに(駒を)トリニータ(取りにくい)か……」とまさかのオヤジギャグで和ませてくれるなど、気遣いを感じたこともしばしばだ。 1月28日に発売された『羽生善治×AI』(宝島社) 2019年1月、羽生さんとの研究会が10年の節目を迎えたのを契機に、私は『羽生善治×AI』(宝島社刊)を上