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ブックマーク / honz.jp (33)

  • 『ザ・パターン・シーカー──自閉症がいかに人類の発明を促したか』 if-and-then思考とハイパー・システマイザー - HONZ

    エジソンやビル・ゲイツもそうなのだという。あるいは、ピアニストのグレン・グールドや、バスケットボール選手のコービー・ブライアントも。彼らはみな「パターン・シーカー」、すなわちパターン探しの達人であると考えられる。そして、そのようなパターン・シーカーこそが人類の偉大な発明を導いてきたのだと書は主張する。 書の著者は、イギリスの著名な心理学者サイモン・バロン=コーエンである。彼が「パターン・シーカーこそが人類の偉大な発明を導いてきた」と言うとき、その意味するところはふたつある。ひとつは、上で述べたように、偉大な発明家の多くが卓越したパターン・シーカーであること。そしてもうひとつは、ヒトが身につけたパターン探しの能力こそが、ヒトの進化史において偉大な発明を導いてきたということである。 ならば、そのパターン・シーカーという特性はどのようなものだろうか。それは、簡単に言えば、一見しただけでは明ら

    『ザ・パターン・シーカー──自閉症がいかに人類の発明を促したか』 if-and-then思考とハイパー・システマイザー - HONZ
  • 『世界は五反田から始まった』足元から歴史が広がる - HONZ

    東京は広い。長いこと住んでいても、まだまだ知らない場所がたくさんある。 著者は東京品川区の戸越銀座で生まれ、現在もそこで暮らしている。著者の家は祖父の代からこの地で町工場を営んでいた。 戸越銀座は五反田から東急池上線なら二駅、都営浅草線なら一駅だ。戸越銀座も五反田もそれなりに知っているつもりでいたが、所詮それはピンポイントの知識に過ぎなかった。書を読むまで、このあたりを面としてとらえるイメージがまったくなかったのである。 戸越銀座と五反田は直線距離でわずか1・5キロほどしか離れていない。この界隈に住む人にとっては、戸越銀座商店街も五反田駅周辺も生活圏なのだ。五反田駅を中心とした半径約1・5キロの円を、著者は〈大五反田〉と呼ぶ。 書は〈大五反田〉の歴史を著者の個人史と結びつけて掘り下げた一冊だ。知らない街や他人様の歴史に興味はないと敬遠するのはあまりにもったいない。実は五反田は、日の近

    『世界は五反田から始まった』足元から歴史が広がる - HONZ
  • 『諏訪式。』諏訪湖を中心にした文化圏の謎を探る - HONZ

    中央自動車道の岡谷ジャンクションの近く、諏訪湖サービスエリアは温泉施設が併設されドライバーに人気がある。諏訪湖を一望のうちに見渡せ、まさに絶景のスポットなのだ。 諏訪湖は中央構造線とフォッサマグナの二大断層が交差する地質的に複雑な場所で、温泉が湧き出る理由もそこにある。縄文時代から人が住み、独特の風習や信仰が残っている。 著者の小倉美惠子はドキュメンタリー映画のプロデューサー。川崎北部の自宅の土蔵に、古くから貼られていた黒い犬のお札のルーツを求め『オオカミの護符』を製作し、その後、2011年、同名のノンフィクションを上梓した。 現在製作中の新作映画『ものがたりをめぐる物語』の舞台は諏訪だ。その撮影のために足を踏み入れた諏訪は様々な顔を見せてくれた。 地元から生まれた産業には時計やカメラ、オルゴールなどの精密機械をはじめ、寒天、生糸などがあり、この土地には「ものづくりのDNA」が受け継がれて

    『諏訪式。』諏訪湖を中心にした文化圏の謎を探る - HONZ
  • 『ファシズムの教室 なぜ集団は暴走するのか』日常に潜む小さなファシズム - HONZ

    数年前のこと、ツイッターで奇妙な動画を見た。揃って白いシャツにジーンズを身につけた大勢の若者たちが、「リア充爆発しろっ!」と大声で叫んでいる動画だ。声を揃え息を合わせ、大声で唱和している。「なんだこりゃ?」。 どれどれと検索してみると、ある大学で行われている「ファシズムの体験学習」だという。どうやらその動画は、周りで見物していた学生が撮ったものらしいが… 甲南大学文学部の田野大輔教授のファシズム体験学習である。 田野教授が「田野総統」、学生たちは「田野帝国の国民」となって行なわれるロールプレイングを通して、人々がファシズムを受け入れるときどのような感情の動きがあるのかを体験させ、いわば「ファシズムに対するワクチン」となるような気づきを得ることを目的としている。 体験学習は2回にわたって行う。大教室に集まった250人で行う大規模ロールプレイだ。1回目。「独裁」を体験するのだからなんといっても

    『ファシズムの教室 なぜ集団は暴走するのか』日常に潜む小さなファシズム - HONZ
    whalebone
    whalebone 2020/07/03
    『そこではどんなに暴力的は行動に出ようとも、上からの命令なので自分の責任が問われることはない。この「責任からの解放」という単純な仕組みにこそ、ファシズムの危険な感化力があると言ってよい』
  • 『孤塁』初めて語られた双葉郡消防士たちの「あの日」 - HONZ

    あの日、あなたはどこで何をしていただろうか。 2011年3月11日、福島県双葉郡では、多くの学校で卒業式が執り行われた。子どもたちは通い慣れた校舎に名残惜しさを感じながら、未来への希望に胸を膨らませていたに違いない。だが14時46分、巨大地震がこの地を襲った。 書は、双葉郡の消防士たちが初めて「あの日」について語ったノンフィクションである。震災について書かれた多くのノンフィクションの中でも出色の一冊だ。 書の優れている点。それはプロフェッショナルの証言に基づいているところだ。私たちは現実を見ているようで、案外見ていない。事故現場の取材で目撃者に話を訊くと、「とにかく驚いた」とか「ドカーンと音がして気がついたら倒れていた」とか、目の前で起きたことを描写するのではなく、単なる感想や擬音で雰囲気だけを伝えるケースがよくある。無理もない。私たち素人は、想定外の出来事を前にすると動転してしまうの

    『孤塁』初めて語られた双葉郡消防士たちの「あの日」 - HONZ
  • 「神保町」へ、ブラHONZしてきました - HONZ

    はーい、こんにちは。好評だった箱根箱に続く、2回目のブラHONZは、の街・神保町です! 神保町といえば、世界最大の古書街で、たくさんの出版社が集まる、まさに好きの聖地。第1回の箱根箱に続き、私・塩田春香と足立真穂が、神保町散策&マンガアートホテル宿泊をレポートします! ――というわけで、やってきました、神保町(私、会社が神保町にあるので、 わざわざ「やってきた」わけではないのですが……)。 足立とは宿泊するマンガアートホテルで落ち合う予定。それまで一人でぶらぶらと、神保町を歩くことにします。 神保町の歴史をひもとくと、皇居のすぐ北側にあるこの地域は江戸時代、武家屋敷が立ち並んでいたそうです。神保町の名は、この地に屋敷をかまえた旗・神保家に由来しています。 古書店が集まり始めたのは、明治になってから。現在、書店の数は古書店と新刊書店合わせて200店舗ほど、出版社の数も大小合わせて5

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  • 『吃音 伝えられないもどかしさ』誰にでも居場所がある社会をつくるために - HONZ

    自分が体験したことがないことを想像するのは難しい。 かつて我が身に降りかかってきたことや、常日頃から感じていることなどをもとに他者に共感することはできるが、体験したことがなく、ましてや関心すら持ったことがないことについては、なかなかイメージすることができない。 だが書はあなたに驚くべき体験をもたらすだろう。 このを読み終えたあとは、世界の見え方が変わるはずだ。これまで見えなかったものが見えるようになり、気がつかなかった人々の存在に気づくことができるようになるはずだ。 あなたがこれまで想像もできなかったこと。 それは、世の中にはうまく言葉を発することができない人がいる、ということだ。耳は聞こえ、声を出すこともできるのに、言葉が詰まってしまい、なめらかにつなげていくことができない人々のことである。「吃音」と呼ばれる症状だ。 吃音を発症するのは、幼少期の子どもの約5%、およそ20人に1人と言

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  • 失われた技術を復元する──『ジャイロモノレール』 - HONZ

    書はジャイロモノレールについての概説書である。ジャイロモノレールとはレールが一の鉄道の名称である「モノレール」にジャイロスコープを利用し、無支持で走行できる安定性を付与したものになるが、この技術は20世紀のはじめ頃(1900〜1910年)に開発され、その後大戦に突入したことで開発は中断。そのまま、それを成立させる技術も失われてしまっていた。 もともとモノレールが1レールで移動できるので、鉄道と比べれば2倍の輸送効率となり、ジャイロモノレールは既存の鉄道レールの上に乗っかってバランスをとることもできれば、それ以外の場所でもレールを一置くだけで走行できるなど、敷設費が安くおさえられる利点がある。ジャイロスコープを用いた車体の構築など、体費用は多額という難点もあり、一長一短ではあるものの、使い所はあるとみられていた。だが、一度開発が中断した後、再度この技術を再現しようとする人は長らく現れ

    失われた技術を復元する──『ジャイロモノレール』 - HONZ
  • 『ほぼ命がけサメ図鑑』これが世界でただ一人、サメ専門ジャーナリスト・沼口麻子の生きざまだ! その①  - HONZ

    やばい、遅刻だ! 必死で走る私。バッグの中には、『ほぼ命がけサメ図鑑』。 その日私は、世界でただひとりのサメ専門ジャーナリスト(シャークジャーナリスト)であり書の著者でもある、沼口麻子さんと会う約束をしていた。が、池袋駅前で道に迷ってしまっていた。 サメ――海に行ってもお会いしたくない生物の代表格。「凶暴な海のハンター」というイメージをもつ人も多いことだろう。 ところがそのサメを追い求めて、サメの情報発信を生業としている女性がいる。しかも、6年がかりで執筆した『ほぼ命がけサメ図鑑』は発売後わずか5日で重版したというではないか! 『ほぼ命がけサメ図鑑』は、サメの生態など科学的な紹介から料理など人との関係、サメQ&Aに研究現場の紹介などなど、内容盛りだくさんのサメへの熱い想いにあふれる一冊である。 これはもう、著者に会ってみたいと思わないほうが、おかしいのではないか。 時間ぎりぎりに、汗だ

    『ほぼ命がけサメ図鑑』これが世界でただ一人、サメ専門ジャーナリスト・沼口麻子の生きざまだ! その①  - HONZ
  • ふたりの技術者の邂逅が巨大組織を動かした『軌道 福知山線脱線事故 JR西日本を変えた闘い』 - HONZ

    ひと言で言えば、彼らには事故を起こした当事者という意識がないんですよ。乗客の安全を誰が守るのかという自覚がない。ただ自分たちの組織と権益を守りたいから、外部に責任転嫁を図ったり、運転士個人のミスとして処理しようとする。上から下までそういう組織になってしまっているんでしょう。だから、幹部連中が入れ替わり立ち替わりうちに来て、いくら謝罪の言葉を並べ立てても一つも響かない。当に申し訳ないことをしたという人間的感情も、これからは絶対に安全最優先に努めるという意思も伝わってこない 2005年4月25日、死者107名・負傷者562名を出したJR西日・福知山線の脱線事故。その事故でを亡くし娘が瀕死の重傷を負った淺野弥三一の言葉である。「どうやって事故直後の数日間を乗り切れたかのかわからない」、「火山の噴火口に取り残された気分だった」、「当時の心境をひと言で言えば……自暴自棄、やろうね」と振り返る「

    ふたりの技術者の邂逅が巨大組織を動かした『軌道 福知山線脱線事故 JR西日本を変えた闘い』 - HONZ
  • 『全電源喪失の記憶 証言・福島第1原発 日本の命運を賭けた5日間』あのとき何があったのか - HONZ

    あの日、自分はどこで何をしていたのか。みんなが語ることができる。それぞれの国の国民には、そんな共通の大事件や大ニュースがあるものです。 かつてアメリカでは、それはジョン・F・ケネディ大統領暗殺事件でした。その後、2001年9月11日の同時多発テロになりました。 いま日で共通の記憶は、2011年3月11日でしょう。東日大震災の発生のとき、どこにいて、何をしていたのか。北海道や九州・沖縄の人にとってはテレビニュースで津波が押し寄せる映像を見たときの記憶が、いまも鮮明でしょう。 東日では、いつ止むともわからない絶望的な長時間の揺れに脅えた時間だったことでしょう。 私はあの日、成田空港に着陸態勢に入っていた全日空機の中でした。アメリカ・ワシントンでの取材が終わって帰国するところだったのです。いったん着陸態勢に入ったものの、機は上空で周回を始めました。「大きな地震が発生し、空港が閉鎖になりまし

    『全電源喪失の記憶 証言・福島第1原発 日本の命運を賭けた5日間』あのとき何があったのか - HONZ
  • 『「東京DEEP案内」が選ぶ 首都圏住みたくない街』だけど、行ってみたくなる街 - HONZ

    「絶対に○○してはいけない」というニュアンスの言い方には、言外に反対の意味が含まれることも多い。「絶対に笑ってはいけない」「絶対に電車の中で読んではいけない」といった枕詞の後には、大抵笑いが待ち受けているものだ。いわゆるフリという奴である。 しかし書の「住みたくない」は、どうも気と書いてマジと読ませるタイプのようである。吉祥寺、自由が丘、下北沢は「甘すぎて無理ゾーン」。豊洲、武蔵小杉、新浦安は「似非セレブすぎて無理ゾーン」。二子玉川、清澄白河は「意識高すぎて無理ゾーン」というから、もはや書の著者は一体どこに住んでいるのだろうかと問い質したくもなる。 著者は、触れられたくない街の「不都合な部分」にあえて首を突っ込んでいくことで定評のある「東京DEEP案内」というサイトの管理人。元々は大阪を中心に西成や生野区といったDEEPなスポットばかりを紹介する「大阪DEEP案内」を運営しており、2

    『「東京DEEP案内」が選ぶ 首都圏住みたくない街』だけど、行ってみたくなる街 - HONZ
  • 『図書館100連発』さりげない緻密な工夫がいっぱい - HONZ

    図書館の創意工夫を100種類紹介する書籍である。子供の頃から図書館につれられ、その工夫にひとり微笑んでいた私のような人間には面白おかしく読めるであるが、他に読者が存在するのだろうか。疑問に思って、書を途中で閉じて、図書館に関する統計データを探ってみた。 2016年時点で公共図書館の数は3,300館弱、専任職員は1万人を超える程度である。他に私設の図書館もあるのだろうが、読者母数としては心細い数字だ。と思っていた矢先、小中高の学校には図書館の設置義務があることを学校図書館法によって定められている。また、大学の図書館も加えると、35,000を超える学校図書館がある。 合計40,000近くある図書館。そこで働く方々を読者の中心の据えた、マニアックだがターゲットが鮮明で、確実に役に立つ書籍である。100連発というタイトルは、ニコニコ学会βの発表企画「研究100連発」をヒントにしている。 図書館

    『図書館100連発』さりげない緻密な工夫がいっぱい - HONZ
  • 『アルカイダから古文書を守った図書館員』 - HONZ

    2013年1月、アルジェリア東部の天然ガス精製プラントで、日人を含む大勢の外国人がイスラム過激派に拘束される事件が起きた。アルジェリア軍と過激派の交戦により結果的に少なくとも37人の外国人が死亡し、内10人はプラント大手「日揮」社員などの日人だった。このニュースが駆けめぐったときの衝撃は、今も記憶に新しい。 では、このとき犯行グループが何を要求していたかを知っているだろうか。そのひとつは、隣国のマリで進行中のフランスによる軍事介入を停止することだった。なぜマリ? そう首をひねる人もいるかもしれない。だがアルジェリアの事件の首謀者は、その軍事介入と浅からぬ因縁があった。そして軍事介入の背景には、1年近くにわたったアルカイダによるマリ北部の支配があり、その陰には危機を受けて敢然と立ち上がったひとりの男がいた。この知られざるドラマ

    『アルカイダから古文書を守った図書館員』 - HONZ
  • 虎屋が駆け抜けた日本史 『和菓子を愛した人たち』 - HONZ

    「虎屋」。ほとんどの人が聞いたことがある……どころか、べたこともらったこと贈ったこと、なにかしらお世話になっているに違いない。室町時代後期の創業以来、500年以上にわたって日の和菓子業界をリードしてきた老舗だ。その虎屋には、和菓子を研究する部門「虎屋文庫」がある。 創業以来、約500年の歴史を持つ虎屋は、現在の黒川光博社長で17代目、売り上げは約186億円(2016年)。私自身でいえば、羊羹の代名詞『夜の梅』は知っていても、和菓子の歴史などはつゆ知らず、興味を持つきっかけになったのが「虎屋文庫」の展示に行ったことだった。 歴史の長い虎屋には、菓子の見帳や古文書、菓子木型や古器物などが数多く伝来する。この虎屋文庫は社内の一部署として1973年に設立、資料の保存や整理、和菓子関連の展示開催や機関誌『和菓子』(研究論文などを収録)の発行などを行ってきたのだ(問い合わせなどは可能だが、史料は

    虎屋が駆け抜けた日本史 『和菓子を愛した人たち』 - HONZ
  • 『鳥類学者だからって、鳥が好きだと思うなよ。』受け身であること、それは最高のエンターテイメントである - HONZ

    「HONZで紹介するって、どんな基準で選んでいるんですか?」そう聞かれることは結構多いのだが、いつも歯切れの悪い回答になってしまう。 むろん小説はのぞくとか、いかにもなビジネス書は紹介しないとか、ジャンルとしての縛りは色々あるのだが、それだけが重要なわけではない。要は、難解なサイエンスや分厚い歴史ばかりをスラスラ読みこなす小難しい集団、そんな風に思われることは絶対に避けたいのだ。 しかし今なら一冊のを差し出しながら、「こんなだよ」と自信を持って伝えることが出来るだろう。それが書『鳥類学者だからって、鳥が好きだと思うなよ。』だ。 無駄に面白いーーこれ以上の贅沢が考えられるだろうか? 単に鳥類学の普及が目的というだけであれば、ここまで面白くする必要はなかったはずだ。著者の川上和人氏は、森林総合研究所で研究に勤しむ鳥類学者。以前『鳥類学者 無謀にも恐竜を語る』をHONZでもしつこいく

    『鳥類学者だからって、鳥が好きだと思うなよ。』受け身であること、それは最高のエンターテイメントである - HONZ
  • 『ブルマーの謎 <女子の身体>と戦後日本』ブルマー教授が出来るまで - HONZ

    『ブルマーの謎』は、最近ではすっかり見ることもなくなった女子体操服の「ぴったりブルマー(密着型ブルマー)」をテーマにした一冊である。長年研究を続けた社会学者が手掛けており、ブルマー研究の決定版とも言える内容だ。しかしこの画期的な研究が始まったのも、ゼミ生たちとの苦し紛れのやり取りから生まれた「偶然の産物」であったという。当時、山ゼミに所属していた小松聰子さんに、ブルマー教授誕生までの秘話を寄稿いただいた。(HONZ編集部) 今、私の中では嫉妬の炎が燃えまくっている 。そう、我らがブルマー教授こと山先生がとうとうブルマーを出されたのだ。これが身悶えずにいられようか。 なぜ、私がこんなにもムズムズとしているのか、それを説明するためには15年以上も前に時計の針を戻さなくてはならない。私は書の著者、山雄二教授のゼミに所属する大学3回生であった。卒業グループ研究のテーマを決める打ち合わせの

    『ブルマーの謎 <女子の身体>と戦後日本』ブルマー教授が出来るまで - HONZ
    whalebone
    whalebone 2016/12/13
    『現象自体は誰もが知っているのに、その経緯については誰も知らない。こういう事柄には案外、大事なことが隠れているのではないか』
  • 『非モテの品格 男にとって弱さとは何か』ルサンチマンを超えた先にあるもの - HONZ

    タイトルを見て思わず手に取った。面白そうだと思ったのではない。憤慨したのだ。 はっきり言って私はモテない。メディアに出れば、ネットの掲示板には「ブス」という心無い言葉が流れる。だから、モテないことには一家言もっている。 だが、このタイトルには全く同調できなかった。 男はたとえ生まれ持った容姿に恵まれなくとも、筋肉をつけ、身なりに気を使い、学歴や財力、権力、そして小粋なトークでもできれば、間違いなくモテるようになれるだろう。これら全ては後天的な努力で手にすることができるものばかりだ。努力が足りないだけなのに「弱さ」とは一体何事かと憤りながらページをめくった私は、後頭部を殴られるような衝撃を受けた。 「ふと、自殺した友人や知人たちの顔を、今でも思い出すことがある。」という書き出しから始まる冒頭には、社会の期待するマッチョな男性像に絡め取られ、声を上げることもできないまま死を選んでしまう男性たち

    『非モテの品格 男にとって弱さとは何か』ルサンチマンを超えた先にあるもの - HONZ
  • 『死すべき定め 死にゆく人に何ができるか』 - HONZ

    死は生の対極ではなく、まぎれもなく生に内包された概念である。それでも我々は、豊かに生きることに精いっぱいで、「豊かに死ぬ」ために必要なことを、あまりにも知らない。かつてないほど長生きをするようになった現代社会だからこそ、見落としてしまうことの数々。現役外科医にして「ニューヨーカー」誌のライターでもある著者ガワンデが、「生と死の狭間」の意味を痛切に問いかける。(HONZ編集部) 『死すべき定め』は人を変える ガワンデのの翻訳を手がけるのはこれで2冊目である。『医師は最善を尽くしているか』(みすず書房、2013年)のときのあとがきに私はこう書いた。 初校を校正しながら、私は読まされた。読まされるという感じで、ついつい先はどうなるかと読みた くなるのである。すべては自分が翻訳した自分で書いた文章である。先がどうなるかも知っている。 なのに読みたくなる。 今

    『死すべき定め 死にゆく人に何ができるか』 - HONZ
  • 『バイエルの謎 日本文化になった教則本』文庫解説 by 最相 葉月 - HONZ

    小学生の頃、同じマンションに住むピアノの先生の家に週に一回、通っていた。自分の家にピアノがないのに習うというのは、今考えるとかなり無謀な挑戦だった。練習に使用したのは、赤い表紙のバイエル教則。正直、つまらなかった。赤を終えると黄色になったが、依然としてつまらなかった。同じことの繰り返しで飽き飽きした。 少し楽しくなってきたのは、父親が電気オルガンを買ってくれてから。発表会に向けて課題曲も決まった。テオドール・エステン作の「人形の夢と目覚め」。静かでゆったりとしたメロディーで始まり、途中から軽やかなテンポに変わる。まさに眠りから覚めた人形が突然踊り出すような可愛らしい曲だった。 転居先の町でも引き続きピアノ教室に通った。だが、私のピアノはここで練習したチェルニー教則で終わる。シャープやフラットの数が増えてわけがわからなくなったためだ。いや、もっと決定的な理由がある。ラジオから流れてきたビ

    『バイエルの謎 日本文化になった教則本』文庫解説 by 最相 葉月 - HONZ