異次元の金融緩和が始まった2013年当時、日銀審議委員を務めていた野村総合研究所の木内登英エグゼクティブ・エコノミストは、大規模緩和策に異を唱え続けてきた。日銀が目指す2%の安定的な物価上昇の実現は今後も困難とみている。「ボタンの掛け違い」は、どのようにして生じたと考えているのか。 利上げはあと2回程度か ――3月にマイナス金利解除など政策転換を決めた植田和男総裁の政策運営をどう評価しますか。 ◆異次元緩和で日銀は(長短金利操作など)珍しい政策を次々と打ち出したが、効果は明確ではなく副作用も大きかった。これまでの政策を整理し、短期の金利操作を主とする伝統的な金融政策に戻すことは、植田氏の歴史的な使命だ。 市場の混乱を招かずに実施した3月の政策変更は評価できる。利上げよりも副作用を減らすことを主眼としている。23年7月に長期金利操作の上限を、従来の0・5%程度から1%程度まで柔軟化させた時か