保安院のドアの向こうが騒がしくなった。 今頃『異変』に気づいたのか、と作業員が思った瞬間、 勢い良くドアが開いて二人の政府関係者が飛び込んできた。 「くそ、何をやっている!! ここで何かトラブルでもあったら、我が国の原子力政策が――!!」 何かを叫びかけた役人は、けれど途中で背中を殴られたように息を詰まらせた。目の前にある建屋の残骸――そしてそこから放たれる放射能を見て心臓が止まったような顔をしている。 政治家が……あれだけ原子力発電を推進してきた政治家が、目の前の光景に絶句していた。 「……め、『炉心溶融(メルトダウン)』って、そんな。そもそも原発は絶対安全なはずなのに!」 作業員は振り返らない。 振り返るだけの余裕がないのも事実だったし、もう、現実(メルトダウン)から目を逸らすのは嫌だった。 「おい、、放射能(コイツ)が何だか知ってんのか!」だから、振り返らないまま叫ぶ。「コイツの飛散