中国周辺民族は古来固有の文字を持たず、漢字漢文を受容してそれぞれの文化を形成して来た。その過程で、漢字の草体化・省画化・増画化或いは漢字の構成原理を応用して、固有文字を生み出して来た。それ故に、漢字の果して来た役割は限りなく大きい。 漢字文献の記述において、字体への意識はどのように働いたのか、その規範は如何なるかたちで作り出され、作用したのか。 漢字字体の歴史的・地域的変遷や諸文献中の字体異同、実用例と字書記述とを相互的に検討することにより、字体のもつ資料的意義を体系化し、対象文献の時代比定や作成背景を探る画期的資料論。 序 論 漢字字体史研究―序に代えて― 石塚晴通 第一部 字体理論と字体変遷モデル 漢字字体の日本的標準 石塚晴通 金属活字と文字の同一性 豊島正之 唐代楷書字体規範からみた『龍龕手鏡』 西原一幸 書法と書体 紅林幸子 第二部 字体データベース論 漢字字体規範データベースの