現在開催中の「没後50年記念加藤土師萌展 ― 色絵磁器を極めた人間国宝 その技とデザイン ―」展のポスターになっている「萌葱金襴手丸筥(もえぎ・きんらんで・まるはこ)」を納めたカートン(段ボール箱)の上には、黄色い札に太い赤マジックで「金箔触るな」と書いてありました。ご覧のとおり丸い器の全面に金箔の花唐草文が焼き付けられています。「金襴手」とは金を織り込んだ綾錦のようだ、という意味です。この作品の最大の見どころのうえに繊細で、万が一の場合においては修復が難しいからです。「むむ、触らないでどう持つの?」と思わずうなってしまいました。 本展は岐阜県現代陶芸美術館から巡回してきた展覧会です。巡回展の良いところは、参加館の企画力や交渉力を結集してより良い内容と作品を獲得でき、図録製作や展示備品などの経費が節減できる点です。その反面、大きな課題が作品の安全確保です。作品の出し入れや展示・撤去、輸送の