ブックマーク / www.newsweekjapan.jp/reizei (9)

  • 大阪は「副首都」ではなく「アジアの商都」を目指せ

    大阪に首都機能を分散しても日経済の活性化には繋がらない(写真は今年9月に中之島公園に登場した巨大アヒル) leungchopan-BIGSTOCK 今回の大阪ダブル選挙で、自民党が民主・共産支持票欲しさに「無所属」出馬という「姑息な手」を使ったために有権者の反発をらった、そんな解説があります。ですが、結果として大阪維新にとって勝ちは勝ちであり、これで再び「都構想」が息を吹き返していくのでしょう。 そもそも、どうして「都構想」、つまり府市合併による行政の大胆なリストラを行わなくてはならなくなったのかというと、大阪の経済が落ち込んでいるからです。その点に関しては、大阪維新は当初から認識はしていました。 橋下徹氏も、府市の合併というのは破壊的なリストラ以上でも以下でもないことは分かっており、重要なのは大阪を再び成長させていく戦略だということについて、何度も言及しています。 ですが、問題はその

    大阪は「副首都」ではなく「アジアの商都」を目指せ
  • 『永遠の0』の何が問題なのか?

    先月に一時帰国した際、評判の映画『永遠の0』を観ました。また、小説も評判であるというのでこちらも読みました。どちらもプロの仕事であると思います。技術的に言えば、ストーリー・テリング(物語の展開)だけでなく、セッティングやキャラクターの造形、そして何よりも時空を超えた大勢のキャラクターが、物語の進行とともに「変化していく」効果が見事です。 キャラクターの「変化」というのは、「成長」したり「相互に和解」したり、あるいはキャラクターに「秘められていた謎」が明かされたりしてゆくという意味です。そうした効果を、時空を超えた複数のキャラクターを使って、しかも2000年代と第二次大戦期という2つの時間軸の中で実現している、そのテクニカルな達成はハイレベルだと思います。 更に言えば、老若男女の広範な層にまたがる読者あるいは観客は、多くのキャラクターの中から自分の感情を投影する対象を見出すことができるように

    『永遠の0』の何が問題なのか?
  • 「和解」を困難にする「謝罪外交」は見直す時期ではないのか?

    どうして中国韓国の世論は、日に対して領土ナショナリズムによる攻勢をかけてくるのでしょうか? それは、中国側から見た日韓国から見た日というのは他の二国間関係とは異なり、第2次世界大戦の終結以降も、正常な関係が持てていないからです。 正常でないというのは、日が常に謝罪要求の対象だということです。これは、二国間関係としては異常です。では、どうして日と周辺国との間には、こうした異常な関係が続いているのでしょうか? まず、中国韓国は、日の「国体=国のかたち」が戦前戦後を通じて一貫していると考えています。戦前の国体が「護持される」ということが、戦争終結の条件として連合国に認められた以上、国体の一貫性は明白であり、したがって現在の日の国体は過去の責任を継承しており、すなわち謝罪の主体となるという考え方です。 これに対して、日の世論の半分は同調していると言っていいでしょう。「日国は

  • ハーバードはどうしてホームレス高校生を何人も合格させるのか?

    この春、ノースカロライナ州のローンデールという小さな町に住む、ドーン・ロギンスさんという女子高校生のもとに、ハーバード大学から一通の封書が届きました。この春高校を卒業するロギンスさんは、何校かの大学に願書を出しており、既に分厚い入学案内を同封した合格通知も受け取っていたのです。ですが、ハーバードから来たのは薄い封筒でした。 これは不合格通知に違いないと思って開封したロギンスさんは、文面を見てビックリすることになります。そこには、いかにもハーバードらしい文面で「小職は合格者選考委員会の決定に従って、あなたを2016年卒業見込み生として入学を許可する旨、ここに通知することを喜びとする者であります」と書かれていました。ロギンスさんは、ハーバード大学に合格したのです。地元のバーンズ高校としては開校以来初めての快挙でした。 現在18歳のロギンスさんは、貧困とドラッグ中毒に囲まれて育ちました。父親は家

    ハーバードはどうしてホームレス高校生を何人も合格させるのか?
  • 君が代「口元チェック」の何が問題なのか?

    さすがの大阪の橋下市長も「君が代不起立」問題への反応として、「君が代歌唱の口元チェック」などという行動が現実のものになるとは思っていなかったのではないでしょうか。いつもとは違って、レスポンスまでの時間には、躊躇や熟考があったというニュアンスが漂っています。 そうは言っても、政治家として国政を視野に入れている市長としては、「前進あるのみ」という判断になったのでしょう。ところで、私は従前から、橋下氏のスタイルは、シンガポールの「創業者」であるリー・クワンユー元首相に近いと申し上げてきましたが、今回のエピソードは正にそうしたイメージに重なってきます。 ですが「それでいいのか?」という答えは簡単に出ると思います。それは「ノー」です。 まず、どうしてリー・クワンユーはシンガポールで「チューインガムの禁止」などの強権政治を続けているのかというと、亡くなった金大中(元韓国大統領)との対談での発言ですが、

  • 追悼、吉本隆明氏を送る

    87歳という高齢になるまで例えば糸井重里氏との対話など、批評家として時代を見つめていた活力もこの方らしかったように思いますが、その一方で、静かな亡くなり方にも吉さんらしさを感じます。エネルギッシュな言葉の奔流が暖かな余韻を残す一方で、ふっと立ち去るような訃報が不思議にバランスしているように思うのです。 バランスという意味では、60年近い間、厳しい発言を続けると同時に、言葉への責任感を忘れない方でした。吉さんの言葉はこれからも日の「戦後」の記録として古びることはないと思いますが、その説得力も責任感ゆえだと思います。 古びないということでは、私は吉さんの再評価というのは必要だと思います。漠然と学生運動や左翼運動の理論的支柱だったというようなイメージで、冷戦型の対立が消えたのと同じように、吉さんの思想も時代遅れになっていったと社会的には思われています。批評家の吉隆明というより「よしも

  • 震災瓦礫の広域処理、3月11日に声明を出すのは何とかならなかったのか?

    最初にお断りしておりますが、震災瓦礫の広域処理は進めるべきだと思います。また、この問題で敢えて踏み込んだ姿勢を示した野田政権を批判するつもりはありませんし、仮にこの材料を倒閣の材料にしようという勢力が出てくるのであれば、その非人間性には怒りを覚えます。 ですが、他でもない3月11日に他でもない野田首相が「災害廃棄物処理特別措置法に基づき、文書で協力を要請する考えを表明」したというのは、何とかならなかったのかと思うのです。野田首相の「国は一歩も二歩も前に出て行かなければならない。日人の国民性が試されている」というセリフも、主旨は分かりますが、3月11日に言うべき内容であったのかについては、疑問が残ります。 とは言っても、私の感想はそんなに単純に整理はできないので、箇条書きにすることをお許し下さい。 (1)3月11日には犠牲者の追悼や国際的支援への感謝に徹して欲しかったように思います。3月1

  • アメリカで「病児保育」が社会問題にならない理由とは?

    まず、現在の日社会では病児保育の問題は非常に深刻であり、この問題を解消するために病児保育を引き受けるNGO団体が活動を始めています。その多くは私の知る限り良心的なものが多いようで、例えば病児保育を担う一方で働き方の改善を提言したりする団体の努力などには注目をすべきだと思います。 それ以前の問題として、日の現状において病児保育の問題、つまり「休めない、早く帰れない時に子供が熱を出したら大変」という問題を抱えている家族を批判はできません。社会的な条件、生き方の前提が異なる「専業主婦カルチャー」を前提にして「子供が病気なのに人に預けるのはかわいそう」という非難をすることは間違っていると思います。 ちなみに、アメリカにも「病児保育問題」が全くないわけではありません。特にシングルペアレントの場合、子供が突発的に熱を出して学校の保健室に引き取りに行かねばならないケースなどでは、実際に困っている人が

  • 「橋下イズム」と「ティーパーティー」その同時代性 | 冷泉彰彦 | コラム | ニューズウィーク日本版 オフィシャルサイト

    予想通りの圧勝でした。大阪市の橋下候補はともかく、大阪府の松井候補も大差での勝利、しかも歴史的な高投票率ということですから、この選挙結果は無視できません。それにしても、アメリカで見ていて思うのは、日米の政治風土が酷似しているということです。 非常に小さな例では、例えば私の住んでいる地区では、大学町のプリンストンでも似たような事件がありました。町の中心部にある自治区(プリンストン・ボロ)と、その周辺を取り囲むような町(プリンストン・タウンシップ)というのは、コスト配分を巡る争いから100年以上分裂した自治体を形成していたのです。ですが、今年行われた住民投票の結果で、最合併することになりました。その目的は単純で行政二重コストの削減です。試算によれば、合併後の全域で、固定資産税の減税が可能になるというのです。勿論、リストラの痛みは伴いますが、双方での住民投票の結果ですから仕方ありません。 このプ

  • 1