1993年4月23日、歴代天皇として初めて沖縄県を訪問し、「ひめゆりの塔」に供花される天皇陛下と皇后さま=潮田正三撮影 93年の初訪問直後 沖縄戦の犠牲者への「慰霊の日」にあたる6月23日。天皇陛下は今年も、皇居・御所で祈りをささげられた。この11日前、元沖縄県知事の大田昌秀さんが92年の生涯を閉じた。「慰霊は天皇の決められた務めではない。自身の意思で続けてこられたのでしょう」。亡くなる2カ月前、陛下への思いを取材でそう語った。 1993年4月、陛下は歴代天皇として初めて沖縄を訪問した。第44回全国植樹祭への出席が公式目的だった。帰京直後の同月28日、大田さんは陛下の住まいだった東京・赤坂御所を訪ねる。来訪へのお礼の意を署名で示す「記帳」が目的で、陛下に会う予定はなかった。だが、大田さんの上京を聞いた陛下は「お会いしたい」と応接室に招いた。